夕なぎ (1968年の映画)

イタリアの島を舞台にした、運命と人間の業を描いたドラマ『夕なぎ』

1968年、イギリスで製作されたジョゼフ・ロージー監督による長編劇映画『夕なぎ』（原題: Boom!）は、テネシー・ウィリアムズ自身の戯曲『牛乳列車はもう止まらない』を映画用に脚色した作品です。美しいイタリアの風景と、ハリウッドを代表するスター、エリザベス・テイラーとリチャード・バートンの重厚な演技が魅力の作品として知られています。

物語の舞台は、イタリアのナポリ湾に浮かぶ小さな島。そこには、フローラ・ゴーフォース（エリザベス・テイラー）という女性が隠遁生活を送っています。かつては絶世の美女として名を馳せていたフローラは、原因不明の病に侵され、横暴な振る舞いを繰り返す日々を送っていました。彼女は秘書であるミス・ブラック（ジョアンナ・シムカス）に、過去の栄光の日々を語り、回想録を書き綴ることに日々を費やしています。

そんなフローラの前に、ある日、クリス・フランダース（リチャード・バートン）という男が現れます。クリスはフローラが雇ったボディーガードであるルディ（マイケル・ダン）と犬に襲われ負傷します。フローラはクリスを介抱するようミス・ブラックに指示し、同時に、カプリの魔術師（ノエル・カワード）にクリスの身元調査を依頼します。

カプリの魔術師は、クリスについて驚くべき予言を残します。彼は「死の使い」であり、彼が訪れた家の女主人は必ず死に至るというのです。この不吉な予言を聞いたフローラは、クリスに惹かれ、彼を誘惑しようとします。しかし、クリスはフローラの誘惑を拒絶します。その屈辱に耐えかねたフローラは倒れ、魔術師の予言通り、クリスの前で息を引き取ります。

この映画は、イタリアのサルデーニャ島にあるカッチャ岬やカルトエ浜、ローマなどでのロケーション撮影によって、地中海の美しい風景を余すことなく映し出しています。また、ジョン・バリーによる音楽、ダグラス・スローカムによる撮影、リチャード・マクドナルドによる美術など、スタッフの技量も高く、作品全体のクオリティを高めています。

『夕なぎ』は、テネシー・ウィリアムズの劇的な脚本、豪華なキャスト、そして美しい映像が融合した、忘れ難い作品です。運命と人間の業、そして人生の終わりを問いかける、重厚なドラマと言えるでしょう。1969年12月に日本で劇場公開され、2008年にはキングレコードからDVDが発売されています。 この作品は、テネシー・ウィリアムズ、エリザベス・テイラー、リチャード・バートンといった、20世紀を代表する巨匠たちの才能が結集した、まさに歴史に残る名作と言えるでしょう。映画史に残る、美しくも哀しいドラマを、ぜひご鑑賞ください。

もう一度検索