外国放送情報局

外国放送情報局（FBIS）とは

外国放送情報局（FBIS：Foreign Broadcast Intelligence Service）は、アメリカ合衆国の中央情報局（CIA）が管轄していた諜報機関です。その主な役割は、世界各地のラジオ、テレビ放送、新聞などのメディアを傍受・監視し、翻訳した情報を、アメリカ政府内の関係機関に提供することでした。FBISは、オープンソースインテリジェンス（公開情報）を活用する情報収集機関として重要な役割を果たしました。

FBISの歴史

FBISの前身は、1941年に連邦通信委員会に設立された外国放送監視局（FBMS）です。当初、FBMSは枢軸国によるプロパガンダ放送の監視を目的としていました。しかし、真珠湾攻撃を機に、その重要性が増し、名称を外国放送情報局（FBIS）に変更し、機能も拡大されました。

FBISは、短波ラジオ放送を録音し、テキスト化と翻訳を行い、分析結果を政府機関に送付していました。特に、東京ローズなどの日本からの放送や、ヒトラー、ムッソリーニなどの演説は、重要な情報源とされました。また、FBISは、多言語に対応できる人材を必要としており、コロンビア大学でジャーナリズムの修士号を持つハロルド・N・グレイブス・ジュニアを上級管理者として採用し、各言語のエキスパートを集めました。日系人強制収容所にいた言語学者も採用されたことは特筆すべき出来事です。

第二次世界大戦後、FBISは陸軍省に移管され、解散の危機に直面しましたが、キューバ危機の発生により、その重要性が再認識されました。その後、活動範囲は拡大され、世界中のラジオ、テレビ放送、出版物など、あらゆるメディアを対象とするようになりました。

沖縄におけるFBIS

沖縄県読谷村の残波岬にあった米軍基地ボーロー・ポイントは、FBISが運営する海外最大の盗聴拠点でした。1949年に開設された瀬名波通信施設では、アジア全域、特に日本、中国、ベトナム、ソ連のラジオ、テレビ放送、新聞ファックスなどを24時間体制で傍受していました。最盛期には、1ヶ月に最大135万語の資料と数百時間のテレビ録画をアメリカ本部に送信していたといわれています。

FBISは、放送の傍受だけでなく、対象国でのイベントにおける政府高官や軍関係者の顔写真を収集し、データベース化していました。また、沖縄では、沖縄メディアや抵抗運動に関する情報収集も行っていました。沖縄返還後、FBISの施設は在沖縄米陸軍の一部に編入され、活動を継続しました。その後、瀬名波通信施設は日米特別行動委員会（SACO）合意により返還されましたが、その機能の一部はトリイ通信施設に移されたと考えられています。

また、2012年には、FBISの後継であるCIAのオープンソースセンターが、沖縄における親米的な世論形成のためのマニュアルを作成していたことが明らかになっています。

デジタル化されたオープンソース

FBISが収集した膨大な量のデイリーレポートは、現在、デジタル化されオンラインで提供されています。これらの資料は、歴史研究や情報分析において貴重な資源となっています。

関連資料

FBIS: Records of the Foreign Broadcast Intelligence Service
CIA: FBIS Against the Axis, 1941-1945: Open–Source Intelligence From the Airwaves


FBISは、冷戦時代において重要な役割を果たした諜報機関であり、その活動は、現代のインテリジェンス活動にも影響を与えています。オープンソースインテリジェンスの重要性を示す好例と言えるでしょう。

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