多羅尾伴内

多羅尾伴内（たらお ばんない）

多羅尾伴内は、比佐芳武が原作・脚本を担当したミステリ映画シリーズの主人公であり、架空の探偵です。このシリーズは「七つの顔の男」や「藤村大造」シリーズとも呼ばれ、特に片岡千恵蔵が主演したことで知られています。1946年から1948年までの大映時代に4作品、1953年から1960年の東映時代に7作品が製作され、観客に大ヒットを記録しました。

映画シリーズでは、千恵蔵演じる多羅尾伴内が変装を駆使して様々なミステリーを解決するという構図が高く評価され、特に名ゼリフ「ある時は○○、またある時は××、しかしてその実体は……!」は多くのファンに模倣されるほど人気を博しました。

多羅尾伴内誕生の背景

1946年、連合軍占領下の日本において、チャンバラや剣劇が禁止されました。これにより、大映の脚本家比佐芳武は現代劇を執筆することを余儀なくされ、試行錯誤の末に多羅尾伴内の物語を生み出しました。こうして誕生した『七つの顔』は、千恵蔵がミステリ劇で数多くの役柄に変身する痛快な内容となり、封切り後は大評判となりました。

映画シリーズの展開

大映では『七つの顔』以降、シリーズは続々と製作され、観客を惹きつける喜劇的要素やアクションシーンが特徴です。特に大映時代における作品は、昭和戦後の日本の復興期において、観客が求める理屈抜きの娯楽性に応える形で成功を収めました。ただし、映画批評家の間では内容に対する否定的な意見もありました。

その後、千恵蔵は東映に移籍し、1960年までの間に多羅尾伴内として更に多くの作品に出演しました。東映時代には、作品がより定型化され、娯楽色が強まることで多くの観客を楽しませました。

リメイクと後世への影響

1978年、シリーズを受け継ぐ形で小池一夫と石森章太郎による劇画『七つの顔を持つ男 多羅尾伴内』が発表され、続いて東映によるリメイク映画が製作されました。主演に小林旭が迎えられ、千恵蔵版の魅力を引き継ぎつつ新たな試みが行われましたが、興行的には成功を収められず、2作品で終了しました。

多羅尾伴内の影響は映画だけにとどまらず、漫画やテレビドラマ等でもしばしば取り上げられています。例えば『アルセーヌ・ルパン』や『雪之丞変化』などが、そのスタイルや構成に影響を与えたとされています。

まとめ

多羅尾伴内は、日本のミステリー物語に新しい風を吹き込み、観客に愛され続けるキャラクターとなりました。時代を超えて色褪せない彼の魅力は、今後も多くのファンに語り継がれていくことでしょう。

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