多重債務者対策本部

多重債務者対策本部

多重債務者対策本部（たじゅうさいむしゃ たいさくほんぶ）は、日本国内で深刻化した多重債務問題に対して、政府が一体となって取り組むために内閣に設置された組織です。多重債務とは、複数の金融機関や貸金業者からの借入により、返済が困難になった状態を指します。この問題は、個人の経済的な破綻だけでなく、家族関係への影響、健康問題、さらには違法な取立てやヤミ金問題など、社会全体に広がる様々な課題を引き起こす可能性があります。

このような複合的な問題に対処するためには、単一の省庁の枠を超えた横断的なアプローチが不可欠です。金融、消費者保護、司法、福祉、治安維持など、多岐にわたる分野での連携が必要となります。多重債務者対策本部は、こうした背景を踏まえ、関係省庁間の連携を強化し、政府全体の対策を円滑かつ効果的に推進することを目的として設けられました。

本部の設置は、2006年（平成18年）の閣議決定に基づいて行われました。これにより、多重債務者に対する支援策の策定、債務整理の促進、相談体制の整備、さらには多重債務に陥ることを予防するための啓発活動など、幅広い施策を政府主導で進めるための体制が確立されました。本部の運営に関する庶務、すなわち日常的な事務処理や会議の準備などは、内閣の事務を統括する内閣官房が担当しています。

本部の構成員は、多重債務者対策に関連する分野を担当する複数の国務大臣によって構成されます。本部長には、金融システム及び金融政策を所管する内閣府特命担当大臣（金融）が、財務大臣を兼任する形で就任します。これは、金融機関からの借入れが多重債務の根源であること、また財務省が国の財政全般を担う立場にあることを反映したものです。

本部員としては、消費者行政を担う内閣府特命担当大臣（消費者）をはじめ、国家公安委員会委員長（治安）、総務大臣（地方公共団体との連携）、法務大臣（司法・債務整理）、文部科学大臣（教育・啓発）、厚生労働大臣（福祉・雇用）、経済産業大臣（中小企業対策・産業金融）など、多重債務問題に関わる様々な分野の大臣が就任します。これらの関係閣僚が一堂に会することで、それぞれの所管する立場から多重債務問題の現状と課題を共有し、各省庁の施策を有機的に連携させた総合的な対策を議論・決定することが可能となります。

本部設置後、多重債務問題への対応は政府の重要課題として位置づけられ、関係閣僚による会議が複数回開催されてきました。初期の活動としては、設置決定から間もない2006年12月26日に第1回会議が開催され、本部の設立趣旨や今後の取り組みの方向性などが確認されました。続いて、2007年4月20日には第2回会議が行われ、具体的な対策の進捗状況や新たな施策について検討がなされています。これらの会議を通じて、多重債務者の救済と自立支援、多重債務問題の再発防止に向けた政府の方針が定められ、実行に移されていきました。

このように、多重債務者対策本部は、複雑かつ深刻な多重債務問題に対し、政府が一体となって効果的な対策を推進するための重要な司令塔機能を担う組織です。関係省庁の緊密な連携を促進し、国民の生活再建を支援し、社会全体の安定に貢献するための政策立案と実行において中心的な役割を果たしています。

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