夜、カルメンの詩集

夜、カルメンの詩集

『夜、カルメンの詩集』は、日本の著名なロックシンガーである清春が発表した通算9作目にあたるオリジナル・アルバムです。この作品は、彼のキャリアにおいて重要な転換点の一つとなったトライアドレーベルへの移籍後、初めて制作されたオリジナルフルアルバムとして位置づけられています。

アルバムの特徴とコンセプト

本作の最も顕著な音楽的特徴は、アルバム全体にわたって色濃く反映されたスパニッシュ音楽の要素です。清春の持つ独創的な世界観と、情熱的かつ憂いを帯びたスパニッシュテイストが見事に融合し、これまでの作品とは一線を画すサウンドスケープを構築しています。情熱的なフラメンコギターの響きや、哀愁漂うストリングス、リズミカルなパーカッションなどが楽曲の随所に散りばめられ、聴き手を異国情緒あふれる世界へと誘います。

また、アルバムの視覚的な側面も特筆すべき点です。ジャケットアートワークは、国内外で高く評価されるコラージュアーティストの河村康輔が担当しました。彼の独自のアプローチによって生み出されたビジュアルは、アルバムの持つ退廃的でありながらも美しい世界観を表現しており、作品全体の完成度を高めています。

制作過程におけるエピソード

『夜、カルメンの詩集』の制作は、いくつかの予期せぬ展開を辿りました。当初の構想では、全12曲を収録したアルバムとしてリリースされる予定でした。しかし、清春自身が後に語ったところによると、レコーディングの進行中に「様々な問題」が発生したため、最終的に収録楽曲数が削減され、全10曲でのリリースとなりました。この結果に対し、清春は本作を「未完成の中の完成」と表現しており、予定していた形とは異なりながらも、その過程を経て生まれた作品に独自の意味合いを見出しています。

当初収録が予定されていた楽曲のうち、「ジプシー」という楽曲は、本作には収められませんでしたが、後にタイトルを「Wanderer」と改め、会場限定シングルとして発表されています。

参加ミュージシャン

本作には、清春の歌声とサウンドを支えるために、多岐にわたる分野で活躍する優れたミュージシャンたちが多数参加しています。彼らの卓越した演奏技術と表現力が、アルバムの持つ深みと多様性を支えています。主な参加メンバーと担当楽器、楽曲は以下の通りです。

Guitar:
智詠 (M-1, M-2)
大橋英之 (M-2, M-8)
是永巧一 (M-3, M-5, M-7, M-10)
DURAN (M-4, M-6, M-9)
Bass:
沖山優司 (全楽曲)
Drums:
Katsuma (M-1, M-2, M-4, M-6, M-7, M-8, M-9, M-10)
佐藤強一 (M-3, M-5)
Percussion:
容昌 (M-1, M-2, M-4, M-6, M-9)
Keyboard:
中村圭作 (M-1, M-6)
Strings (M-7):
Top Violin: 沖祥子
2nd Violin: 伊勢三木子
Viola: 志賀恵子
Cello: 四家卯大
Violin:
土屋玲子 (M-9)
Cello:
* Robin Dupuy (M-10)

これらのプレイヤーたちが織りなすサウンドは、清春のボーカルを彩り、『夜、カルメンの詩集』 unique な音楽世界を創り上げています。本作は、制作過程での困難を乗り越え、清春の新たな音楽的探求心と表現力が結実した、聴き応えのあるアルバムと言えるでしょう。

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