夜光の階段

夜光の階段

『夜光の階段』は、著者・松本清張による長編小説で、美容師の道夫が様々な女性たちの力を借りながら、成功へ向けての暗い足跡を辿る物語です。物語の背景には、1960年代末から1970年代初頭にかけての美容業界の変化がありました。特に、男性美容師の台頭が注目される中、道夫は一介の美容師として独立を目指し、彼の周りの女性たちとの関係を利用していきます。

この作品は、もともと1969年に『週刊新潮』に「ガラスの鍵」という題名で連載されましたが、後に加筆修整の後に『夜光の階段』のタイトルで1981年に単行本として出版されました。物語はピカレスク・サスペンスとして、多くの読者の興味を引きつけています。

あらすじ

道夫は、才能のある美容師でありながらもチャンスに乏しい状況にいる。彼は周囲の女性たちを巻き込みながら、徐々に出世を画策していくが、やがてその野望が引き起こす事件に直面します。道夫は女性たちの魅力と策略を武器に、まるで階段を上るかのように、名声と権力を手に入れようとしますが、その道のりは決して平坦ではありません。

主な登場人物

• - 佐山道夫: 村瀬美容室に勤務する腕利きの美容師です。独立を夢見ており、自身のステータスを向上させるために周囲の女性たちの助けを借ります。
• - 波多野雅子: 波多野証券社長の妻で、道夫の後ろ盾となる存在です。金銭的援助を通じて彼を支える。
• - 枝村幸子: 一流婦人雑誌「女性回廊」の編集者で、道夫の成功をサポートします。
• - 福地フジ子: 有名週刊誌の編集者で幸子と友人関係にあります。道夫に影響を与える力を持っています。
• - 竹崎弓子: 赤坂の割烹料理店の女将で、道夫に資金を援助することになります。
• - 波多野伍一郎: 波多野証券の社長で、妻とは異なり、外に愛人を持っています。

この作品はまた、テレビドラマとしても何度も映像化されています。1983年には最初のドラマが放送され、以降1986年、1995年、2009年に続く作品が放送されました。これらのドラマ化によって、原作のストーリーはより多くの観衆に親しまれるようになりました。

エピソード

連載が始まった当時、男性美容師の進出が目立ち始めた時期と重なります。著者は、パーマ屋としての女性のイメージを覆す男性美容師の存在に着目していました。また、美容師がファッションの重視される中、どのように技術を磨いていくかというテーマも含まれていました。

松本清張は、本作の取材の際に特定の美容室を訪れ、内部の様子を詳細に描写しています。この背景を元に、登場人物たちの複雑な関係性が生まれ、道夫の苦悩と成長が描かれます。彼が直面する女性たちの策略や誘惑は、単なる物語の背景に留まらず、時にはドラマの中心的な要素となるのです。

この作品は、成り上がりを夢見る主人公がさまざまな誘惑に翻弄される姿を通じて、社会の冷酷さや女性たちの生き様を描写することに成功しています。結末には衝撃的な真実が待ち受けており、読者は道夫の選択がもたらす影響に心を揺さぶられることでしょう。『夜光の階段』は、松本清張が描く人間の欲望と闇の深さを如実に表現した傑作です。

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