夜明け (松山千春の曲)

シンガーソングライター、松山千春が1979年に世に送り出した通算7枚目となるシングル盤が、表題曲の『夜明け』（よあけ）です。具体的には、この作品は同年8月21日にリリースされました。

このシングルは、A面に『夜明け』、そしてカップリング曲（B面）に『サイクリング』を収録しています。特に、カップリング曲である『サイクリング』については、その後の展開において特筆すべき経緯をたどりました。

多くのリスナーが松山千春の代表的な楽曲と出会ったアルバムの一つに、『起承転結』があります。しかし、『サイクリング』は、この重要なオリジナルアルバムには収録されませんでした。そのため、シングル盤でしか聴けない、あるいは入手が難しい状態が長らく続きました。レコード盤からCDへのメディア移行が進む中で、彼の多くの楽曲がCD化されていく中にあっても、『サイクリング』はすぐにはCDとしてリリースされる機会を得られませんでした。

このように、長年にわたりデジタル媒体であるCDで聴くことが困難な状況が続いていた『サイクリング』ですが、その状況は1996年になってようやく変化を迎えます。この年に発売された松山千春のベスト・アルバム『ANTHOLOGY 〜SINGLE COLLECTION〜』に『サイクリング』が収録されたのです。これが、公式な形での『サイクリング』の初CD化となりました。これにより、かつてシングル盤でしか聴けなかった、あるいはアナログレコード時代を知らないリスナーにとっては初めて、この楽曲をクリアなデジタルサウンドで楽しむことが可能になったと言えるでしょう。

シングルのパッケージであるジャケット写真にも注目すべき点があります。この『夜明け』のジャケットに使用されているアーティスト写真は、当時、若者文化を牽引し、多くの人気アーティストやアイドルの情報を掲載していた集英社が発行する雑誌、『明星』より提供されたものが採用されています。

このシングルがリリースされた1979年という年は、日本の音楽シーンが多様化し、様々なジャンルのアーティストが活躍していた時代でした。松山千春自身も、この頃に立て続けにヒット曲を発表し、シンガーソングライターとしての地位を確固たるものにしていきます。『夜明け』もまた、そんな彼の勢いを象徴する楽曲の一つと言えるかもしれません。

『起承転結』というアルバム名が関連項目として挙げられていることからも分かるように、このシングルがリリースされた時期は、松山千春のキャリアにおいて、その後の代表作へと繋がる重要なフェーズであったことがうかがえます。このように、『夜明け』というシングルは、単なる一作品としてだけでなく、カップリング曲の特殊なCD化経緯や、当時のメディアとの関わり、そして彼の活動の節目を示す作品として、松山千春のディスコグラフィーにおいて興味深い位置を占めています。

総合すると、『夜明け』シングルは、そのA面曲と共に、長らく隠れた存在であったB面曲『サイクリング』の歴史、そして当時の音楽業界の一端を示すジャケット写真の出典など、多角的な視点から語られるべき松山千春の作品と言えるでしょう。特に『サイクリング』がベスト盤で初めてCD化された事実は、熱心なファンにとっては大きな出来事であり、この楽曲への関心を再び高めるきっかけとなりました。

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