夜明けを告げに

オフコース（当時の表記はジ・オフ・コース）が1971年10月5日にリリースした2枚目のシングル「夜明けを告げに / 美しい世界」は、彼らの音楽キャリアにおいて重要なターニングポイントとなった作品です。

背景

地主道夫の脱退後、小田和正と鈴木康博のデュオとなったオフコースは、聖光学院の後輩である小林和行をサポートメンバーに加え、このシングルを発表しました。ディレクターは当時ボン・ミュージック所属の梅垣達志が担当。ヤマハとの繋がりがあった梅垣は、偶然オフコースのデモテープを耳にし、それまでのフォークとは一線を画す音楽性に感銘を受け、彼らをプロの世界へと導きました。

編曲は、エキスプレス・レーベルで数々の作品を手がけていた青木望が担当。彼は後にオフコースのデビュー・アルバム『僕の贈りもの』でもストリングス・アレンジを手掛けることになります。シングルリリース直前には、オフコースはパシフィック・エンタープライズへの所属が決定し、プロとしての第一歩を踏み出しました。プロ入りと同時期に加入した小林は、高校時代からオフコースを応援しており、赤い鳥とのジョイント・コンサート「8人の音楽会」のスタッフも務めていました。小田と鈴木からの誘いは、「ベースを弾くだけでいいから」という気軽なものだったと言います。その後、鈴木はベースからギターに持ち替え、オフコースは以前と同様の編成で活動を継続することになりました。

楽曲について

「夜明けを告げに」は、レコード会社がヒットを狙って加藤和彦に作曲を依頼した作品です。演奏はオフコースがギターとベースを担当。当時、小田と鈴木は他人の曲でも気に入れば積極的に取り入れるという姿勢だったと、後に小田はインタビューで語っています。

プロとしての最初のシングル制作にあたり、ディレクターの梅垣は、オフコースと専門家の両方が楽曲を制作し、その上で検討するという形を望んでいました。しかし、当時まだ駆け出しだった梅垣にとって、著名な作曲家に依頼した楽曲がイメージに合わなかった場合、断ることが難しい状況も想定されました。そこで、関西にいた頃の友人である加藤和彦に作曲を依頼することにしました。梅垣は加藤にオフコースの演奏テープを渡し、作曲を依頼。「加藤君が作ったのはアップテンポの軽快な曲で、小田君のはメロディーのきれいな曲だった。僕は元々“その線”のオフコースに惚れ込んだわけだし、小田君の曲は気に入ったの。でも難しすぎるんですよ。転調はするしコード進行は難解だし、大作なの。で、手を加えて簡単にしようかとも思ったけど、明るい感じのほうが良いってことで、加藤君のをA面にしました。でも小田君の曲は、青木望さんにアレンジをお願いしたらますます大作になって、良い曲でしたよ」と後に語っています。

「美しい世界」は、小田和正が初めてレコードに収録されたオリジナル作品です。当初、小田がつけた「このひとときを大切にして」というタイトルは、レコード会社の意向で変更されました。一般的には「僕の贈りもの」が初のオリジナル曲として知られていますが、実際には「美しい世界」の方が2年早く発表されています。

両曲は、第3回オフコース・リサイタル「明日への歩み」でも演奏されました。

パッケージとアートワーク

ジャケット裏面には、両曲の歌詞と「夜明けを告げに」の楽譜、そして鈴木、小田、小林のメンバー紹介が掲載されています。

収録曲

SIDE A: 夜明けを告げに (LEAVING ALL BEHIND)
SIDE B: 美しい世界 (IF YOU REALLY LOVE ME)

クレジット

鈴木康博 – ギター, ヴォーカル, ベース, ドラム
小田和正 – ギター, ヴォーカル
* 小林和行 – ベース, ヴォーカル

このシングルは、オフコースの音楽性の多様性と、プロとしての成長を示す上で重要な作品と言えるでしょう。

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