夜明け告げるルーのうた

映画『夜明け告げるルーのうた』

『夜明け告げるルーのうた』は、2017年に公開された日本のアニメ映画で、湯浅政明が監督を務めています。脚本は湯浅と吉田玲子が共同で手掛け、この作品はサイエンスSARUによって制作されました。この映画は、アヌシー国際アニメーション映画祭で長編部門の最高賞を受賞しており、他にも数々の賞を獲得しています。「君の'好き'は、僕を変える」というキャッチコピーが、ストーリーの中心テーマを表しています。

背景と制作

湯浅政明監督は、これまでに『劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ』や『マインド・ゲーム』、さらには『四畳半神話大系』や『ピンポン THE ANIMATION』など、数多くの受賞作品を手がけてきました。彼は本作を通じて、現代社会における「好き」を口にすることの重要性をテーマにしています。キャラクターのデザイン原案は、漫画家のねむようこが担当し、伊東伸高がキャラクターデザインや作画監督を務めました。また、音楽は『思い出のマーニー』の劇伴を担当した村松崇継が手掛けています。

本作の原型となる作品は、1999年に監督したパイロットフィルム『なんちゃってバンパイヤン』です。この映画では、水の表現について特にこだわりを持ち、湯浅監督はシンプルでありながらも動きが面白い表現を追求しています。人魚を描くにあたり、宮崎駿作品からの影響を受けつつも、独自のスタイルを追求しました。

あらすじ

物語は、東京出身の中学3年生、足元カイの視点から描かれます。彼は日無町の実家で父と祖父とともに暮らしており、この町には人魚の伝承が残っています。カイは感情をあまり表に出さず、学校の進路調査には何も記入せずに提出します。夏休みが近づく中、カイは自身が作った音楽を動画投稿サイトにアップし、それがきっかけで同級生たちとバンド「セイレーン」を結成します。

バンドの練習中、カイたちは人魚の少女・ルーと出会います。ルーはカイのスマートフォンを海から取り出し、彼に渡します。音楽を聴くことで彼女は下半身が鰭から足に変わり、舞い踊ります。カイと仲間たちはルーとの秘密の関係を深め、この奇妙な少女との友情が物語の中心になります。

だが、事が進むにつれて、ルーの存在は町全体に影響を及ぼし、彼女を見つけたり捕まえようとする町の人々の動きが活発になります。映画のクライマックスでは、町に起こる様々な現象に対抗し、カイの音楽の力を使って人々と人魚たちが協力し、町を救おうとします。

登場人物

• - ルー: 声 - 谷花音。幼女に近い姿を持ち、人語を話すことができるが、片言で表現します。音楽に合わせて踊ると人間が自然に踊り出す不思議な力を持っています。
• - 足元カイ: 声 - 下田翔大。物静かな中学生で、ルーと出会い、彼女を通じて自分の感情を表現することができるようになります。
• - 海老名遊歩: 声 - 寿美菜子。カイのクラスメイトで、バンドのボーカル兼ベース。自分を正当に評価されないことに苦しみます。
• - 国夫: 声 - 斉藤壮馬。カイの親友でバンドの一員。町の伝統や文化に対しても理解を深めていきます。

受賞と評価

本作はアヌシー国際アニメーション映画祭でクリスタル賞を受賞し、日本の長編作品がこの賞を受賞したのは22年ぶりということです。他にも毎日映画コンクールや文化庁メディア芸術祭でも高評価を得ています。これらの受賞歴は、アニメーション表現の新たな可能性を示しています。

ところで、本作のリリース後には海外での展開も進み、アメリカやフランスなど他国での公開が行われました。特にカルト的な人気を誇り、国際的な映画祭でも話題となりました。

結論

『夜明け告げるルーのうた』は、友情、愛情、そして自分を表現することの大切さを描いた作品です。美麗なアニメーションと温かいストーリーが融合し、観る人々の心に深く残る感動を与えます。

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