夢供養

アルバム『夢供養』について

『夢供養』（ゆめくよう）は、シンガーソングライターのさだまさしが1979年4月10日に発表した、彼の4枚目のオリジナル・アルバムです。このアルバムは、さだ自身の27歳の誕生日にリリースされました。彼は、この作品において単なるシングル曲の集大成ではなく、LPとしての在り方を重視して曲作りを行ったと言われています。特に、ライヴ・レコーディングの「雨やどり」を除き、過去のシングル曲を今作に収録することを控え、最新シングル「天までとどけ」や「惜春」も含まれていません。

さだはアルバムの解説において、シングル曲は最大限に生かす形でリリースし、およそLPのあり方を追求していく決意を表明しました。この方針は5年半後の『Glass Age』まで続くことになりますが、その間にも1982年発表のアルバム『夢の轍』から、シングルカットされる楽曲も登場します。

収録曲には、「まほろば」や「木根川橋」といった楽曲があり、これらは現在でもさだのコンサートでよく演奏される代表曲となっています。特に「まほろば」は、奈良の美しい風景を背景に男女の心のすれ違いを描いた詩的作品で、その美しさと深い情感により、多くのファンに愛されています。

アルバム制作の際、さだは自身が納得のいく作品を仕上げたとのことで、最後の収録が終わった際には、「よし!出来た!」と叫び、興奮のあまり歌詞カードをスタジオの窓から撒き散らしてしまったエピソードもあります。この行動に対し、スタッフからの注意を受け、慌てて拾い集めた際に、一部の歌詞カードが見つからなかったというユーモラスな出来事もありました。

『夢供養』は、1979年の第21回日本レコード大賞においてベスト・アルバム賞を受賞し、累計売上は84万枚を記録しました。このアルバムのタイトルについては、「むきょうよう」つまり「無教養」という異なる読み方も存在し、ファンの間で話題となっています。

収録曲一覧

アナログA面

1. 唐八景 - 序
さだの故郷である長崎の正月風景を描いた作品です。
2. 風の篝火
地元を離れた若い男女の気持ちの距離感をテーマにした曲。
3. 歳時記（ダイアリィ）
男女の同居生活を卒業と共に終える物語。
4. パンプキン・パイとシナモン・ティー
喫茶店「安眠」のマスターの恋物語が語られます。
5. まほろば
奈良の風景を背景にした古典的な性愛の歌。
6. 療養所（サナトリウム）
静かな老女との孤独な交流を描く楽曲。

アナログB面

1. 春告鳥
命のはかなさを美しさとして捉えた作品。
2. 立ち止まった素描画（デッサン）
過去の彼女に対する思いを歌った一曲。
3. 空蝉（うつせみ）
待合室での親子の非情な結末が描かれています。
4. 木根川橋
さだの中学時代の思い出を振り返る物語。
5. ひき潮
望郷をテーマにした楽曲。

このアルバムは、さだまさしの音楽キャリアにおける重要な作品であり、彼の独特な視点や感性が色濃く表れた楽曲が多数収録されています。いまでもなお多くのファンに親しまれており、音楽史に名を刻んでいます。

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