夢幻伝説タカマガハラ

『夢幻伝説タカマガハラ』は、立川恵先生による日本の漫画作品で、作者の代表作の一つです。副題として『DREAM SAGA』という英題が付けられています。

概要

この作品は、『なかよし』（講談社）にて1997年2月号から1999年 6月号まで連載されました。単行本は講談社「KCなかよし」より全5巻が刊行されています。さらに、2004年 3月からは、作者自身の手によって単行本未収録の番外編が同人誌として制作され、作者直営の同人誌通販ウェブサイトMEGUMI-YAで頒布されています。

物語は、日本神話の岩戸伝説をモチーフにした異世界ファンタジーであり、自然破壊と環境保護というテーマが織り込まれています。また、物語を彩る5つの勾玉のアイデアは、滝沢馬琴の読本『南総里見八犬伝』から着想を得ています。

海外では、ドイツでも『Dream Saga』というタイトルで漫画単行本が発売されており、本来の題字である『タカマガハラ』の文字も添えられています。

あらすじ

物語は、神代小学校に通う小学5年生の若狭結姫が、登校中に空から降ってきた赤い勾玉を拾うところから始まります。その勾玉を持って鏡の前に立つと、鏡の中に知らない女性の姿が映し出されます。幽霊だと思って怯える結姫でしたが、意を決して話を聞いてみると、その女性は思兼神（オモヒカネノカミ）と名乗り、結姫の住む人間の世界・中ツ国とは異なる神々の世界・高天原の太陽を司る女王・天照の側近だということがわかります。

天照は病に倒れており、高天原の太陽である彼女の命が消えれば、高天原も滅んでしまう。そうなれば中ツ国の太陽も消え、2つの世界の生きとし生ける者すべてが滅び去ってしまうと告げられます。そして、それを救えるのは勾玉を受け取った者だけだと……。

幽霊ではないと知り安心した結姫は、眠気に襲われ、話を聞き終える前に眠ってしまいます。しかし、それこそが結姫を高天原へと誘う行動でした。実は、高天原と中ツ国は別のようで同じ世界であり、中ツ国の人間が見る夢こそが高天原世界の自分自身の行動なのです。眠りと目覚めを通して曖昧になってしまう記憶を、勾玉の力で保つことができるのです。

目覚めると砂漠にいた結姫は、クラスメイトの甲斐隆臣に瓜二つの盗賊の頭領・隆臣と出会います。憧れの人とは正反対の粗暴な性格に反発しながらも、行動を共にすることになります。やがて、自分が伝説の救世主・地平線の少女だと知った結姫は、隆臣と共に勾玉を持つ4人の天ツ神を仲間にし、天岩戸を目指して天照を救うための旅に出発します。

旅の途中で、人間の欲望によって傷つけられる命あるものたちに奇跡を起こしていく中で、勾玉を得た仲間たちは記憶を共有し、全員が結姫のクラスメートだったことに気づきます。そして、高天原の隆臣と中ツ国の隆臣も同一人物だと推測します。しかし、旅の果てで彼女たちが知った天の岩戸伝説の真実は、恐ろしく残酷なものだったのです。

登場人物

『タカマガハラ』では、中ツ国と高天原の世界を行き来するため、キャラクターが二重に存在します。勾玉を持つ者（地平線の少女と天ツ神）だけが2つの世界の記憶を共有し、その相互影響の元で事実上の同一人物として振る舞えます。

若狭結姫（わかさゆうき）
神代小学校5年1組に通う少女。赤い勾玉を拾ったことで、高天原の伝説の救世主「地平線の少女」となります。
甲斐隆臣（かいたかおみ）
結姫のクラスメートで憧れの少年。穏やかで優しい性格です。
隆臣（タカオミ）
高天原で名を馳せた盗賊団の首領。粗暴な性格で、結姫と反発しあいながらも惹かれあいます。実は破壊神スサノオの力を秘めた天ツ神です。
因幡颯太（いなばそうた）
結姫のクラスメート。秀才ですが神経質な少年。高天原では布刀玉命の力を秘めた天ツ神となります。
和泉那智（いずみなち）
結姫のクラスメート。大企業の御曹司でわがままな美少年。高天原では天宇受売命の力を秘めた天ツ神となります。
日向泰造（ひゅうがたいぞう）
結姫のクラスメート。ガキ大将で単純な性格。高天原では天手力男命の力を秘めた天ツ神となります。
相模圭麻（さがみけいま）
泰造のクラスメート。つかみどころのない性格。高天原では伊斯許理度売命の力を秘めた天ツ神となります。

用語集

高天原（タカマガハラ）
神々の世界。人間の世界（中ツ国）とは夢を通して繋がっています。
中ツ国（ナカツクニ）
人間の世界。高天原とは夢で繋がっています。
天ツ神
高天原に存在する神。

夢幻伝説 タカマガハラ