夢金

夢金（ゆめきん）とは

「夢金」は、古典的な落語の演目の一つで、別名を「錦嚢」とも呼ばれています。この作品の原典は、1773年に出版された笑話本『出頬題』の中の「七ふく神」に由来しています。三代目三遊亭金馬は、この演目をもとに、ストーリーの最後を美しく作り上げるために、シンプルな夢落ちの形にして演じました。

あらすじ

物語は厳しい大雪の夜、舟宿の二階で繰り広げられます。金に執着する船頭の熊五郎は、寝言で「金くれえ」と叫びながらぐっすりと眠っていました。その声を聞いた舟宿の主人夫婦は、思わず呆れてしまいます。

その頃、上等な服を着た若い女を連れた見すぼらしい浪人風の男が宿に到着します。舟宿の主人は、金に汚い熊五郎を勧めようとしますが、男は寝言の声を聞いて、船頭に興味を持ちます。主人は一度は断りますが、男が高額な酒手を提示すると、熊五郎は仕方なく船を出すことになります。

船を漕ぎながら、熊五郎は客の正体について頭を悩ませます。彼らは兄妹だと名乗っていますが、身なりの違いから駆け落ちの可能性が高いと推測します。一方、船の中では客の男が適当に振舞い、熊五郎の気を引こうとします。しかし、熊五郎はそれが気に入らず、櫓を力任せに漕ぎ、船が揺れて男から文句を言われます。

熊五郎は「酒手が足りない」と返し、男がさらに金を支払おうと近寄ると、小声で内密の話をするために船を止めるようDemandします。男は船が止まると、実は自分たちは兄妹ではなく、裕福な女の懐中にあった200両を狙っていると告げます。この女は大店の娘で、別の男と駆け落ちするために大金を持ち出したが、相手と逸れてしまい、困っていたところを浪人風の男に助けられたのです。

そのため、男は熊五郎に協力を要請し、50両ほどの報酬を約束します。しかし、熊五郎はさすがに殺しには協力できないと固辞します。男はその態度に激怒し、ではここで殺すと脅します。そこで熊五郎は一時折れた振りをし、実際に殺しを行う場所を知っているからと嘘をついて、男を川の中洲に誘導します。

その瞬間を見計らって、熊五郎は船を漕ぎ出し、男を置き去りにしてしまいました。彼は無事に女を連れて再び船宿に帰ります。主人夫婦は熊五郎の機転を称賛し、彼は女を実家に送り届けることに成功します。

数日後、女の実家から感謝の品が届きます。中を開けると、切り餅が2つ入っており、これが25両に相当することに驚く熊五郎。彼は50両の大金とともに、喜びをかみしめようとした瞬間、下腹部に激痛が走り目を覚まします。

目を開ければ、彼は無意識に自分の睾丸をつかんでいたのです。このオチは、熊五郎の金銭への執着が人生の皮肉を象徴しています。落語らしい見事なオチとともに、金への執着がどれほど人を狂わせるかを描いた、教訓深い物語です。

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