大下勝正

大下勝正：東京都町田市の発展に貢献した革新的な政治家

大下勝正氏（1927年-2023年）は、日本の政治家であり、東京都町田市において5期20年にわたる長期政権を築いた人物です。大阪市に生まれ、京都大学法学部を卒業後、日本社会党に入党。鈴木茂三郎元委員長の秘書や社会党中央本部政策審議会勤務を経て、1970年に町田市長選挙に初当選しました。

大下氏の市長在任中は、町田市における都市開発と福祉政策の両面に大きな足跡を残しました。特に、町田駅周辺の再開発は彼の主要な業績の一つです。当時、約700メートル離れて存在していた国鉄（現JR東日本）の原町田駅と小田急電鉄の新原町田駅の二つの駅を統合する大規模プロジェクトを推進しました。このプロジェクトでは、国鉄原町田駅を移転し、両駅を「町田駅」に統一するだけでなく、駅舎の近代化や周辺地域の整備も進め、町田市の交通利便性を飛躍的に向上させました。

また、大下氏は福祉政策にも熱心に取り組みました。国鉄町田駅の移転においては、国鉄側の難色にもかかわらず、町田市が費用を全額負担することで、車椅子利用者も安心して利用できるエレベーターの設置を実現しました。このエピソードは、彼の福祉政策への強い信念と、実現に向けた粘り強い姿勢を象徴的に示しています。

一方で、大下氏は市職員労働組合の強い支持を得ていた革新系の首長でもありました。そのため、町田市職員の給与水準や退職金の高額さが問題視される場面もありました。自由民主党所属の市議会の主導により、市職員給与条例改正案が可決された際には、大下氏は異例の対応を取り、条例の公布を拒否しました。この出来事は、彼の政治姿勢と、改革派市議との対立を示す象徴的な出来事となりました。

さらに、大下氏は1989年には町田市内の深刻な渋滞問題を解消するため、地下鉄建設構想を提唱しました。しかし、この構想は具体的な計画に進むことなく、彼の市長在任期間中には実現しませんでした。

大下勝正氏は2023年12月28日、96歳で老衰のため逝去しました。彼の在任期間は、町田市の発展において重要な時代であり、駅周辺の再開発や福祉政策の充実など、多くの功績を残しました。しかし、市職員給与問題や地下鉄建設構想など、解決に至らなかった課題も残っています。彼の政治家としての功績と残された課題は、今後の町田市政においても重要な検討事項となるでしょう。

大下氏は、自身の政治活動や理念をまとめた著書を複数出版しています。代表的な著作として、『一人ひとりの命を 福祉の街づくり・革新町田市政』（社会民主党全国連合機関紙宣伝局、1987年）、『町田市が変わった 地方自治と福祉』（朝日新聞社、1992年）、『福祉の見かた取り組みかた 東京・町田市政』（社会民主党全国連合機関紙宣伝局、1994年）などがあります。これらの著作は、彼の政治思想や町田市政における取り組みを知る上で貴重な資料となっています。

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