大丸城

大丸城の概要

東京都稲城市大丸に存在した大丸城は、室町時代前半に築かれた日本の山城です。この城は、多摩ニュータウンの開発に伴う土地造成が進められていた1980年代に発掘調査が行われました。その結果、里山全体が城として機能していたことが判明しました。

発掘調査の経緯

発掘は1980年から1986年にかけて行われ、多摩丘陵内の大丸地区に位置する「城山」と呼ばれる小高い山が対象となりました。東京都埋蔵文化財センターによる調査の際、この山は造成工事の過程で切り崩され、多くの遺物が発見されました。それにより、山の頂上が本曲輪として使用され、周囲に空堀が設けられていました。この空堀の外には二の曲輪と三の曲輪が配置され、山全体が城郭として利用されていたことが明らかになりました。

城の構造と出土品

この城では、12世紀から13世紀にかけての経塚や墓群、板碑群が発見されました。特に板碑からの評価により、14世紀から15世紀にかけて使用されていたことがわかりました。小規模ながら、城の立地は多摩川を見下ろし、敵軍の動きを監視するのに適していたため、要害としての役割を担っていたと考えられます。しかし、城の主がどの武将であったかは不明のままです。

大丸遺跡の重要性

大丸城の位置する山自体が「大丸遺跡」と呼ばれており、城跡以外にも縄文時代の土坑や古墳時代の横穴墓、さらに奈良時代に武蔵国で製造された屋根瓦の窯跡群が見つかっています。これらの発見は、この地域が古くから人々に利用されていた痕跡を示しており、歴史的な価値を持っています。残念ながら、発掘調査後に山全体が切り崩されてしまったため、現在では遺残が極めて少なくなっています。今は説明看板があるのみですが、発掘から得られたいくつかの品は東京都の指定文化財として保存されています。

社会的影響

大丸城の発見と研究は、地域の歴史を知るための重要な性格を持っています。土地造成によって消失した文化財に対して、再考が求められる時代でもあります。このような遺跡が隠されていることから、文化財の保護や調査の重要性を再認識する必要があります。今後も文化財の適切な保存と公開に向けた取り組みが期待されています。

参考文献

• - 稲城市教育委員会生涯学習課（編）『発掘された瓦谷戸窯跡』文化財ノート第42号、稲城市、2002年3月29日。
• - 稲城市教育委員会生涯学習課1（編）『大丸遺跡（その一）-大丸城と墓跡・経塚・板碑群-』文化財ノート（2011年再版）第24号、稲城市、2011年3月4日。
• - 稲城市教育委員会生涯学習課2（編）『大丸遺跡（その二）-奈良時代の瓦窯跡-』文化財ノート（2011年再版）第25号、稲城市、2011年3月4日。

外部リンク

• - 稲城市郷土資料室
• - 発掘された瓦谷戸窯跡-稲城市教育委員会

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