大久保吉則

大久保 吉則

1941年3月30日生まれ。奈良県出身の元ラグビー選手。ポジションはスクラムハーフ（SH）。身長164cm、体重65kgと小柄ながら、卓越したプレーで日本のラグビー界を牽引しました。天理高校、法政大学を経て、近畿日本鉄道（近鉄）で選手、そして指導者として輝かしいキャリアを築きました。

選手経歴

高校・大学時代

天理高校では3年間、全国高校ラグビー大会に出場しましたが、いずれも初戦で涙をのみました。1960年に法政大学へ進学。4年時の1963年には、関東大学対抗戦で優勝を果たし、記念すべき第1回日本ラグビーフットボール選手権大会に出場しました。しかし、この大会の準決勝で社会人の強豪、後の所属チームとなる近鉄に6対18で敗れています。

近鉄での活躍

大学卒業後の1964年、その近鉄に入社。伝説のスクラムハーフ、福田廣の後継者として期待され、1年目からSHの定位置を獲得。その後、今里良三氏が入部するまで、不動のレギュラーとして活躍しました。

近鉄は当時「近鉄サーカス」と呼ばれる華麗なラグビーを展開しており、大久保氏はその中核を担いました。入社初年度の1964年度には関西社会人Aリーグで優勝。全国社会人大会では準決勝で八幡製鐵に敗れベスト4となりました。翌1965年度も関西社会人Aリーグを制し、全国社会人大会では再び決勝で八幡製鐵に惜敗し準優勝。このシーズンの終盤、1966年3月には3地域対抗戦の全関西代表に選出され、全九州、全関東との試合に出場し、全関西の12年ぶりとなる優勝に貢献しました。また、同年の全日本強化合宿にも招集されています。

1966年度は近鉄の黄金期。関西社会人Aリーグを優勝で飾り、全国社会人大会決勝ではトヨタ自工を破って頂点に立ちました。続く第4回日本選手権では大学王者の早稲田大学を圧倒し、27対11で快勝。日本一の座を獲得しました。翌1967年度も近鉄は快進撃を続け、関西社会人Aリーグ、全国社会人大会（決勝でトヨタ自工に勝利）、そして第5回日本選手権（決勝で母校・法政大学に勝利）と、3冠を達成。日本選手権では2年連続の優勝という偉業を成し遂げました。

日本代表経歴

大久保氏は日本代表としても活躍しました。1966年には全日本強化合宿に参加。1967年3月12日に行われたニュージーランド大学選抜との試合が、大久保氏にとって初の日本代表キャップ対象試合となりました（キャップ1）。1968年5月から6月にかけて行われた全日本のニュージーランド遠征にも参加。全11試合のうち6試合に出場しました。特に、日本のラグビー史に刻まれる伝説的な一戦、オールブラックスジュニアを破った試合では、日本代表のSHとして歴史的勝利に貢献しました。また、この遠征でのもう一つの重要な試合、ニュージーランド大学選抜戦にも出場しています。日本代表キャップは3です。

指導者経歴

1969年度限りで現役を引退した大久保氏は、1年のブランクを経て、1971年度に近鉄のコーチとして現場に復帰しました。コーチとしてチームを関西社会人Aリーグ優勝、全国社会人大会ベスト4に導きました。1972年度にはヘッドコーチに昇格し、関西社会人Aリーグ優勝、全国社会人大会ベスト8の成績を残しました。そして1973年度には監督に就任。以後、1980年度までの8シーズンにわたり、近鉄ラグビー部を率いました。監督としての在任期間中、チームは関西社会人Aリーグで3回の優勝と2回の準優勝、全国社会人大会で1回の優勝と2回の準優勝、そして日本選手権で1回の優勝を果たしました。選手、指導者として、近鉄ラグビー部の黄金期を支え、数々の栄光をもたらしました。

近鉄の監督を退任した後も、大久保氏は地元の奈良県ラグビーフットボール協会で理事や強化委員を務めるなど、ラグビー界への貢献を続けました。選手、代表、そして指導者として、多角的に日本のラグビーの発展に寄与した人物です。

主な成績・栄誉（選手）

全国社会人ラグビーフットボール大会：優勝2回（1966, 1967年度）、準優勝1回（1965年度）
日本ラグビーフットボール選手権大会：優勝2回（1966, 1967年度）
関西社会人Aリーグ：優勝（複数回）
日本代表キャップ：3

主な成績・栄誉（監督）

全国社会人ラグビーフットボール大会：優勝1回（1974年度）、準優勝2回
日本ラグビーフットボール選手権大会：優勝1回（1974年度）
* 関西社会人Aリーグ：優勝3回、準優勝2回

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