大亀孝裕

大亀孝裕

大亀 孝裕（おおがめ たかひろ）氏は、1931年6月13日に愛媛県丹原町（現在の西条市丹原町）に生まれ、2021年3月14日に89歳で生涯を閉じた日本の著名な実業家です。ホームセンター事業を展開する「ダイキ」（現在のDCMの一部）の創業者として知られ、その事業は多岐にわたりました。また、事業活動のみならず、地元愛媛県を中心としたスポーツ振興や地域経済の活性化にも多大な貢献をしました。

経歴と事業展開

西条南高等学校（現在の西条農業高等学校）を卒業後、1952年に愛媛県庁に入庁しました。しかし、行政の道を離れ、1958年には県庁を退職。自身の事業への道を歩み始め、「大亀商事」を創業しました。当初は水まわり商品群の卸売を中心に展開し、タイルや衛生陶器の施工・改修工事なども手掛けていました。

特に、住環境におけるトイレの改善に強い関心を持っており、コンクリート便槽や無臭便槽といった商品の販売を開始しました。この関心が、後に浄化槽の開発・製造へと繋がります。1963年には、業界では初めてとなるFRP（強化プラスチック）製の浄化槽開発を成功させ、翌1964年には、その事業を核とする「ダイキ株式会社（元ダイキ）」を設立。代表取締役に就任しました。

時代の変化を捉え、1978年には新たな事業としてホームセンター分野への進出を決意。「株式会社ディック」を設立し、小売業にも乗り出します。その後、住宅機器の卸売を手掛けていた「ダイキ商事株式会社」、水処理プラントメーカーとしての「ダイキ株式会社（旧ダイキ）」、そして小売業の「株式会社ディック」の3社は、1989年に統合され、新たな「ダイキ株式会社」が発足しました。大亀氏はその代表取締役社長に就任し、経営を主導しました。

1999年にはダイキの代表取締役会長に退き、経営の第一線から一歩引きました。しかし、その経営手腕と経験はその後も求められます。2006年9月、ダイキは、カーマ、ホーマックといった他のホームセンター企業と経営統合し、持株会社であるDCM Japanホールディングスが設立されました。大亀氏はその取締役会長に就任し、翌2007年には代表取締役会長を務めました。

晩年も、故郷である愛媛県への貢献を続けました。2016年6月には、愛媛県で生産・収穫された農水産物の加工や流通を支援し、海外への販路開拓を目指す新会社「ディック」を、私財を投じて立ち上げています。2019年にはDCMダイキの名誉会長に、そして2021年にはDCM名誉会長に就任しました。

社会貢献と人物

大亀氏は実業家としての顔に加え、スポーツ振興にも情熱を注ぎました。長年、愛媛県体育協会会長を務め、同県単独での初めての国民体育大会（第72回国民体育大会）誘致に大きく貢献しました。また、私費を投じて「財団法人大亀スポーツ振興財団」を設立するなど、将来を担う選手や指導者の育成を積極的に支援しました。

経済界においても要職を歴任し、松山商工会議所の会頭や愛媛県商工会議所連合会の会頭を務めるなど、地域経済の発展にも尽力しました。これらの功績が認められ、2007年には旭日小綬章を受章しています。また、故郷である愛媛県西条市からは、2017年に名誉市民の称号が贈られました。

自身の経営哲学については、『素人じゃけんできること : ダイキ創業者・大亀孝裕のフィロソフィー』という著書を通じて語られています。

2021年3月14日、89歳で逝去。多角的な事業展開と、故郷への深い愛情に基づいた社会貢献は、多くの人々に記憶されています。

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