大井オートレース場

大井オートレース場の歴史と影響

大井オートレース場は、東京都品川区に位置するオートレース専用の施設でした。1954年に開業し、わずか19年の間にその歴史を刻みました。このオートレース場は、東京都内で唯一の場であり、大井競馬場の隣接地に設けられました。

開業の経緯

大井競馬場がオープンした1950年から約4年後の1954年11月27日に、大井オートレース場が初めて開催されました。当初は大井競馬場の内部にオートレースコースを設立する計画がまとまっていましたが、競馬関係者からの反対で実現を果たすことができませんでした。そのため、新規に建設されたのは500メートルの舗装路面を備えたコースで、大井競馬場の北側に位置していました。結果として、これは日本初の舗装路であるオートレース場としての誕生を意味しました。

開業当初は集客に苦労しましたが、立地条件やアクセスの良さ、そして舗装路独自の魅力により徐々に人気を集めるようになりました。特に「ダートの川口、舗装の大井」との呼ばれ方をされるまでに成長したのです。また、1965年には東京モノレール羽田線の大井競馬場前駅が開設され、さらなる来場者増加に寄与しました。

黒い霧事件とその影響

しかし、1969年に発覚した黒い霧事件は、オートレース界にも影を落としました。この事件に端を発し、1970年にはプロ野球選手がオートレースの八百長に関与し逮捕される事態が相次ぎました。特に、「大井のエース」と称された戸田茂司選手の逮捕は、大井オートレース場に深刻な影響を及ぼしました。彼は日本選手権オートレースを制した名選手であり、その存在は多くのファンにとって大きなショックであったのです。

廃止と移転

黒い霧事件を受け、都知事の美濃部亮吉は「ギャンブル廃止宣言」を行い、大井オートレース場の廃止案が浮上しました。選手や関係者、ファンは廃止に反対する運動を展開しましたが、結局1973年3月22日にオートレース場は閉鎖されました。その後、群馬県伊勢崎市がその跡地に新たなオートレース場を求め、1976年には伊勢崎オートレース場が誕生します。

現在、大井オートレース場の跡地は大井競馬場の立体駐車場として活用されています。このようにして、短いながらも大井オートレース場は日本のオートレース史において重要な役割を果たしました。

選手とその後の影響

戸田茂司選手以外にも多くの選手が大井オートレース場で活躍しましたが、その多くが廃止と同時に引退しました。中には伊勢崎に移籍した選手もおり、オートレースというスポーツ全体において影響を与え続けています。

大井オートレース場の存在とその短い歴史は、後のオートレース場にも影響を与えました。特に1967年、舗装路への改修時には、そのコースが模範となり、現在のオートレース場は500メートルのオーバルコースが統一されています。また、舗装専用のタイヤが開発される以前は、リヤカー用のタイヤを使用していたため、道路の特性上様々な試練がありました。閉鎖後の計画では、全天候型多目的ドーム球場の建設が検討されましたが、様々な要因で実現には至りませんでした。

今もなお、大井オートレース場の影響は多くの人々の記憶に残り、オートレースの発展に寄与した事実は消えることはありません。

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