大内尉義

大内尉義（おおうち やすよし）は、1949年に岡山県笠岡市に生まれた日本の医師であり、老年医学を専門とする医学者です。長年にわたり東京大学医学部で教育・研究活動を行い、現在は同大学の名誉教授として、この分野の発展に貢献しています。

学歴と初期のキャリア

広島大学附属福山高等学校を卒業後、1973年に東京大学医学部医学科を卒業しました。医師としての第一歩は、卒業後に東京大学医学部第3内科へ入局したことから始まります。内科医として研鑽を積む中で、高齢者の健康問題や疾患に関心を深め、老年医学を専門とすることを志しました。

老年医学研究者・教育者としての歩み

内科での経験を積んだ後、東京大学医学部老年科へと活躍の場を移し、1984年には同医学部の助手となりました。研究者としての視野を広げるため、1985年には渡米し、テネシー大学で客員助教として海外での研究生活を送りました。同年には東京大学より医学博士号を取得しています。博士論文のテーマは「DOCA-Salt高血圧ラットにおける脳内アンジオテンシン2受容体およびレニン様活性についての検討」であり、高血圧の病態生理、特に脳内における特定の受容体や酵素の機能に関する研究に取り組みました。この研究は、循環器疾患のメカニズム解明における基礎的な知見を提供し、その後の老年医学における高齢者の循環器系疾患研究の基盤の一つとなりました。

帰国後の1986年、東京大学医学部老年科の講師に就任し、教育者としてのキャリアも本格化させました。そして1995年、東京大学大学院医学系研究科老年医学分野の教授に昇進。日本の老年医学研究・教育の中枢であるこのポストで、多くの後進の指導にあたり、研究室を率いました。

大学における要職

教授としての活動と並行して、大学の運営にも深く関与しました。2006年には東京大学附属病院の副院長を務め、医療現場の最前線におけるリーダーシップを発揮しました。また、時期は明確ではありませんが、教授在任中に金沢医科大学の客員教授も務め、他大学との連携や教育にも貢献しました。2011年には東京大学保健・健康推進本部長を兼任するなど、学生や教職員の健康管理、大学全体の健康増進体制の整備にも尽力しました。

学会活動と社会貢献

大内氏は、日本の老年医学および関連分野における学会活動においても中心的な役割を果たしました。特に、日本老年医学会および日本老年学会では理事長という最高責任者を務め、両学会の運営、研究推進、国際交流、そして老年医学の普及・啓発活動を牽引しました。これらの学会を通じて、高齢者の健康問題に対する社会的な関心を高め、学術的な基盤を強化することに多大な貢献をしました。

さらに、日本動脈硬化学会や日本認知症学会では理事として、高齢者に多く見られる動脈硬化や認知症といった主要な疾患の研究・対策に貢献しました。また、日本Men’s Health 医学会では副理事長を務め、男性特有の健康問題にも焦点を当てた活動を行いました。学術振興という点では、日本学術会議臨床医学委員会老化分科会で副委員長を務め、国の学術政策や研究振興の方向性に関する提言にも関わりました。

まとめ

大内尉義氏は、医師、研究者、そして教育者として、日本の老年医学分野の確立と発展に長年にわたり貢献してきました。東京大学での教育・研究活動を通じて多くの優れた人材を育成するとともに、主要な学会でのリーダーシップを発揮し、国内の研究水準の向上と社会への貢献を果たしました。高齢化が進行する日本社会において、老年医学の重要性はますます高まっています。大内氏のこれまでの功績は、健康長寿社会の実現を目指す上で、極めて大きな意義を持つものです。現在、東京大学名誉教授として、引き続きこの分野への貢献が期待されています。

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