大友昇平

大友昇平：ボールペンが生み出す独自の表現世界

大友昇平（おおとも しょうへい、1980年 - ）は、ボールペン画で知られる日本のイラストレーターです。漫画家・大友克洋を父に持ち、その影響を受けつつも、独自の画風を確立しました。

生い立ちとキャリア

1980年、東京都武蔵野市に生まれた大友昇平は、幼少期から絵を描くことに熱中し、将来は絵描きになることを志していました。父親である克洋は、彼に絵の指導やアドバイスをすることはなかったものの、昇平は後に自身の作品に父親の画風の影響が見られると語っています。

多摩美術大学では油絵を学びましたが、油絵の具が高価だったため、ボールペン画へと移行します。鉛筆では表現できない銀色の質感がボールペンの魅力であり、以来、ボールペンを主な画材として使用しています。

2000年代初頭にはアメリカのカンザスシティで初の美術展を開催。2012年にはオーストラリアで初の個展「Fool's Paradise」を開催し、その後もオーストラリアを中心に精力的に個展を開催しています。オーストラリアのBackwoods Galleryのディレクターであるアレクサンダー・ミッチェル氏は、大友を「私が知っている中で最も才能のある人」と評し、その技術力と作品の完成度を高く評価しています。2023年時点では、神奈川県小田原市を拠点に活動し、メルボルンにも頻繁に滞在しています。

作風の特徴

大友昇平の作風は、ボールペンという身近な画材を使いながら、緻密で迫力のある表現が特徴です。使用するボールペンは「どこでも80円くらいで買える普通のボールペン」であり、色を塗る際には油性マーカーを使用します。ドローイングは主に板紙に描かれますが、過去には人体模型にアクリル絵の具を塗ってライブスケッチを行ったこともあります。

イラストの制作には最大で1ヶ月を費やし、その80％は計画、スケッチ、描き直しに当てられます。2017年のオーストラリアでの展覧会では、初めて彫刻作品も発表しました。力士をモチーフにした作品は、タトゥーのようなグラフィックで彩られ、彼の表現の幅広さを示しています。

大友の作品には、日本の伝統芸術である浮世絵へのオマージュや、海外からの日本に対するステレオタイプなイメージが融合されています。作品には伝統と進歩、東洋と西洋、秩序と混沌といった相反する概念が共存し、その緊張感が独特の魅力を生み出しています。彼は、東京での息苦しい生活からインスピレーションを得て、作品にそのストレスを表現しています。

作品の特徴として、ハイパーリアリズムにサイバーパンクの要素を加えた表現が挙げられます。人物を描く際にはゴーグルで目を隠すことが多く、これは「目を出すとキャラクターの存在感が絵を圧倒してしまうから」という理由によるものです。また、作品の色使いは黒、白、赤の3色に限定されています。この配色は、日本古来の化粧に使われていた色の組み合わせからインスピレーションを得たもので、「赤い口紅、お歯黒、そして白粉だけである」と語っています。

大友昇平の作品は、ボールペンという身近な画材を使いながら、独自の表現を追求し、見る者を魅了します。彼の作品は、伝統と現代、東洋と西洋の要素が融合し、複雑な現代社会を映し出す鏡のようです。

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