大含

大含：江戸時代後期の僧侶、芸術家、そして教育者

大含（だいがん、1773年5月21日-1850年11月12日）は、江戸時代後期に活躍した浄土真宗（大谷派）の僧侶です。豊後国満徳寺で生まれ、豊前国古城正行寺鳳嶺の養子となりました。また、末広雲華（すえひろうんげ）、雲華院という別名でも知られています。

大含は、若くして東本願寺の高倉学寮（現在の大学にあたる）に入学し、研鑽を積みました。そして、1834年（天保5年）、講師職に就任します。これは、現代の大学長に相当する重要な地位であり、その卓越した学識と指導力が認められた証と言えるでしょう。学寮においては、多くの弟子を育成し、浄土真宗の発展に貢献しました。

学問のみならず、芸術にも深い造詣を持っていました。詩文、書、絵画のいずれにも秀でており、当時の文人墨客と交流を深めました。特に蘭の絵画を得意とし、その作品は高い評価を受けていたと言われています。笑社の中心人物であった儒者の頼山陽や、南画家である田能村竹田らとも親交があり、彼らとの交流を通じて、自身の芸術性をさらに磨いていったと考えられます。

大含の人物像は、豪放磊落で天衣無縫という言葉がぴったりの、飾らない性格だったと伝えられています。身分や地位にとらわれることなく、越中褌一丁で酒を飲み、書物を読むのが常であったという逸話も残されています。その自由奔放な生き方は、当時の社会常識からは逸脱したものでしたが、彼の人格の深さ、そして強い信念を示すものと言えるでしょう。

当時の学僧たちが、大含を含む同時代の著名な説教師たちについて詠んだとされる戯れ歌が、興味深い史料として残されています。「易は上手　含は短し　蛇ながし 　野洲ははなやか　徳なみだかな」。この歌は、それぞれの学僧の説教スタイルをユーモラスに表現したものであり、大含の説教が簡潔で、要点を押さえたものだったことがうかがえます。ここで挙げられている「易」は易行院法悔、「蛇」は江州蛇溝の如説院恵劍、「野洲」は同野洲の実言院慧景、「徳」は香樹院徳龍のことです。この戯れ歌は、大含が同時代の学僧たちと良好な関係を築いていたことを示唆しており、彼の人間性の一端を垣間見ることができます。

大含の生涯は、学僧としての活動、芸術家としての才能、そして豪放磊落な人物像という、多様な側面を持つ興味深いものです。彼の生き様は、現代においても、私たちに多くの示唆を与えてくれるでしょう。大含が残した功績は、学問、芸術、そして宗教の分野において、今もなお高く評価されています。

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