大城道則

大城道則氏（1968年生まれ）は、日本の古代エジプト史研究分野で活躍する学者であり、現在、駒澤大学文学部で教授を務めています。古代エジプト史を専門とし、特にその文明がいかに形成され、周辺世界と関わりを持ったのかという根源的なテーマに深く切り込んだ研究を行っています。

来歴

兵庫県に生まれた大城氏は、幼少期にユニークな経験をしています。埋蔵金探しに熱中する父親に連れられ、しばしば山奥の発掘現場を訪れていたというエピソードは、後の歴史や探求への関心に繋がる原体験の一つとして語られることがあります。関西大学文学部では史学科で地理学を学び、1992年に卒業。その後、同大学院文学研究科の史学専攻に進み、古代エジプト史の研究を深めます。1999年に博士課程後期課程を途中で退学しますが、2001年には「古代エジプト文化の形成と拡散 ナイル世界と東地中海世界」と題した研究で、関西大学から文学博士の学位を取得しました。さらに学びを深めるため、英国のバーミンガム大学大学院へ留学し、古代史・考古学科のエジプト学専攻を修了しています。研究者としてのキャリアは駒澤大学文学部でスタートし、助教授、准教授を経て、2014年からは教授として教育・研究活動に尽力しています。

研究活動と業績

大城氏の研究の中心は、古代エジプト文明の黎明期、すなわち王朝統一以前から初期王朝時代にかけての社会・文化の形成過程にあります。博士論文のテーマが示すように、ナイル川流域で発展した独自の文化が、地中海世界の他の地域とどのように交流し、相互に影響を与え合ったのかという視点を重視しています。特に、国家や王権がいかに誕生し、初期のエジプト文明がどのような形態をとっていたのか、「ピラミッド」が建設される以前の時代に焦点を当てた研究は高く評価されています。これらの研究成果は、『ピラミッド以前の古代エジプト文明』や『ピラミッドへの道 古代エジプト文明の黎明』といった著作として結実し、古代エジプト文明史における王朝前・初期王朝時代の重要性を広く知らしめるものとなっています。また、歴史上の著名な人物であるツタンカーメン王についても、通説にとらわれない実像に迫る研究を行い、その成果を一般向けの新書として出版するなど、専門的な研究と並行して古代エジプト文明の魅力を伝える活動も積極的に行っています。

主な著作

『古代エジプト文化の形成と拡散 ナイル世界と東地中海世界』（ミネルヴァ書房、2003年）
『ピラミッド以前の古代エジプト文明 王権と文化の揺籃期』（創元社、2009年）
『ピラミッドへの道 古代エジプト文明の黎明』（講談社選書メチエ、2010年）
『古代エジプト文明 世界史の源流』（講談社選書メチエ、2012年／講談社学術文庫、2025年1月）
『ツタンカーメン 「悲劇の少年王」の知られざる実像』（中公新書、2013年）

共編著

『古代エジプトへの扉 菊川コレクションを通して』（近藤二郎, 菊川匡共著、文芸社、2004年）
* 『ヨーロッパ史への扉』（入江幸二, 比佐篤, 梁川洋子共編著、晃洋書房、2006年）

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