大塚いちお

大塚いちお（おおつか いちお）は、1968年12月9日生まれの日本のイラストレーター、アートディレクター。現在は東京造形大学の特任教授も務めており、その活動は多岐にわたる。

新潟県上越市に生まれた大塚氏は、新潟県立高田北城高等学校を卒業後、表現の世界を目指して東京へ向かった。グラフィックデザイン系の専門学校で専門知識を習得。卒業にあたり、広告制作会社からグラフィックデザイナーとしての内定を得るが、自らの手で絵を描いて生計を立てたいという強い希望から、その内定を辞退する決断をした。以降、アルバイトで生活を支えながら、フリーランスのイラストレーターとして活動を開始し、キャリアを築き上げていくこととなる。

その才能は早くから評価され、2005年には著書『GIONGO GITAIGO J”ISHO』（ピエブックス）において、デザイン界で権威ある東京ADC賞を受賞した。これは、彼の独特な表現力が認められた証と言えるだろう。

大塚氏はイラストレーターとして、数多くの企業広告やメディア関連の仕事を手がけている。代表的なものとしては、
キリンビールのパッケージイラスト（2003年の「8月のキリン」）
日本郵政グループのメッセージ広告
横浜ゴムの「PRGR」ブランド広告
オリンパスの企業キャラクターデザイン
カルビーの「素材まるごとトート」のイラスト
JR北陸新幹線上越妙高駅のお出迎えキャラクター「ウェルモ」
などが挙げられる。映像分野では、パトリス・ルコント監督の映画『ドゴラ』への参加や、TBSドラマ『ハタチの恋人』（2007年）のタイトルバックアニメーション、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』（2018年）のタイトルバックイラストなど、テレビ番組や映画の世界でもその筆致を発揮している。

アートディレクターとしても活躍しており、その手腕は多くのプロジェクトで発揮されている。
関西テレビのドラマ『ゴーイング マイ ホーム』に登場する愛らしいキャラクター「クーナ」のデザインは特に知られており、これは彼のディレクションによるものだ。
NHK Eテレの子ども向け番組への貢献も大きく、『みいつけた!』や『えいごであそぼ』のキャラクターデザインなどを手がけている。
その他、横浜銀行や東日本銀行の広告キャンペーン、Jリーグに所属する川崎フロンターレのユニフォームデザインなど、企業ブランディングからスポーツまで、幅広い分野でアートディレクションを行っている。

さらに、子ども向けの絵本作家としても人気を博している。
福音館書店からは、日常生活に潜むモノや形に光を当てる「もののえほん いちにち」シリーズ（「ごはん たべよ」「おでかけしようか」「おやすみなさい」）や、「かたちのえほん まる さんかく しかく」シリーズ（「まる みつけた」「さんかく みつけた」「しかく みつけた」）が出版されている。
* また、自身がデザインした「クーナ」を主人公とした絵本もイーストプレスより刊行されており、キャラクターデザインから物語の世界創造までを手がける多才さを見せている。

このように、イラストレーション、アートディレクション、絵本制作と、表現のフィールドを選ばずに活動を展開し、見る人に温かさやユーモアを届けている大塚いちお氏。現在は教育の現場にも立ち、次世代のクリエイターの育成にも力を注いでいる。

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