大塚保治 (美学者)

大塚 保治の生涯

大塚保治（おおつかやすじ）は1869年2月1日、群馬県前橋市で生まれました。彼の旧姓は小屋で、家族の中でも特に兄の右兵衛は木瀬村長として地域に貢献しました。彼は地元の笂井小学校と前橋高等学校を卒業後、上京し、旧制第一高等学校を経て1891年に東京帝国大学文科大学の哲学科を卒業します。

その後、彼は東京専門学校の文学科で教鞭を執り、特にハルトマンの美学を講義しました。彼の学問の旅はさらに続き、1896年から4年間の留学でドイツ、フランス、イタリアの美学を吸収。その後、東京帝国大学の教授としえ美学を講じることになり、1910年には同大学の美学講座の初代教授として日本の美学研究に重要な足跡を残しました。

大塚は非常に優れた学者であり、その業績は明治34年に文学博士として認められたことに繋がります。1925年には帝国学士院の会員にも選ばれ、彼の学問的な立場は確立されていました。1929年には定年を迎え、東大名誉教授の称号を得ましたが、昭和6年の1931年に彼は亡くなります。彼の墓所は雑司ヶ谷霊園にあります。

家庭と子息の業績

大塚保治は1895年に東京控訴院長の娘、楠緒子と結婚し、大塚姓を名乗るようになりました。彼の妻楠緒子もまた、歌人や作家として活躍し、その文学活動は大塚の学問と同様に評価されていました。二人の間には息子が一人おり、その息子はレーニンの著作集を翻訳した大塚弘です。さらに、後妻との間にもう一人の子供もおり、彼女は大内力に嫁いでいます。

夏目漱石との関係

大塚と夏目漱石の交流も非常に注目されます。漱石の作品『吾輩は猫である』には、美学者・迷亭として登場するキャラクターが大塚保治のモデルとも言われています。漱石は1910年に妻を失った大塚に対して、短い詩句で哀悼の意を表しました。この句は「あるほどの菊投げ入れよ棺の中」として知られています。

著作と業績の光

大塚自身は多くの著述を残していませんが、彼の死後に弟子たちによって『大塚博士講義集』が編纂され、彼の思想や講義が後世に伝えられることとなりました。彼の論文の中には、『ロマンチックを論じて我邦文芸の現況に及ぶ』（1902年）などがあり、日本の美学の発展に寄与しています。

彼の業績は今もなお美学の分野で高く評価されており、日本の文化と思想への影響は大きいと言えるでしょう。

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