大夫監

大夫監：源氏物語における魅力と危険性

源氏物語に登場する大夫監は、物語を彩る重要な脇役として、その存在感を示す架空の人物です。大宰府の役人であり、肥後国の名門武士一族出身という出自を持ちます。物語における大夫監は、単なる権力者としてではなく、多面的な性格と行動を通して、読者に深い印象を与えます。

官職と出自

大夫監の官職は、大宰府の判官である「大監」です。大宰大弐、大宰少弐に次ぐ三等官であり、通常は正六位下ですが、大夫監の場合は従五位下に叙爵されていました。この高い地位は、彼の出自である肥後国の豪族としての影響力と、大宰府における実力を示唆しています。肥後国では名声があり、勢い盛んな武士一族として知られていたとされています。

人物像：魅力と危険性の狭間で

大夫監は、30歳前後（青表紙本）とされており、恐ろしいほどの無骨者として描かれています。しかし、一方で強い好色な一面も持ち合わせており、多くの美女を妻にしようと企んでいます。この相反する性格は、大夫監という人物に複雑さと奥深さを与え、物語全体に緊張感をもたらしています。無骨者としての側面は、彼の行動の強引さや、玉鬘への執着心にも表れています。一方、好色な一面は、彼の人間的な弱さや欲望を象徴し、読者に共感と反発の両面を抱かせる要素となっています。

玉鬘をめぐる求婚騒動

大夫監は、物語において玉鬘への求婚者として重要な役割を担っています。夕顔の娘である玉鬘は、母を亡くした後、乳母とその夫（大宰少弐）と共に九州へ下向します。大宰少弐の死後、玉鬘の美貌と高貴な血筋の噂が広まり、多くの求婚者が現れます。玉鬘の養母は、玉鬘に「重い病気」という嘘の噂を流して求婚者を遠ざけようとしますが、大夫監だけは、その噂を信じず、玉鬘を妻にしようと執拗に求婚を続けます。さらに、次男と三男も味方につけた大夫監は、玉鬘の養母や兄である豊後介を窮地に追い込みます。最終的に、玉鬘たちは、豊後介が準備した早舟で、京へと逃げることを余儀なくされます。

物語における位置づけ

大夫監は、第22帖「玉鬘」において主要な登場人物として登場し、その後の第25帖「蛍」においても回想として言及されています。「大夫監」あるいは「監」という表記で物語に現れ、その存在感は、玉鬘をめぐる騒動を通して、物語全体の展開に影響を与えていることがわかります。住吉物語に登場する主計頭との関連性も指摘されており、この点からも、大夫監は単なる脇役ではなく、物語全体を理解する上で重要な人物であると言えるでしょう。

まとめ

源氏物語における大夫監は、その出自、官職、そして複雑な人物像を通して、物語に深みと緊張感を与えています。玉鬘をめぐる求婚騒動は、大夫監の強引さと執着心、そしてその裏に潜む人間的な弱さを見事に描き出しており、読者に強い印象を与えます。彼の存在は、物語全体の理解を深める上で欠かせない要素であり、源氏物語研究においても重要な位置を占めていると言えるでしょう。 様々な解釈が可能な人物像であることも、大夫監の魅力の一つと言えるでしょう。

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