大学前駅 (茨城県)

茨城県水戸市新原にかつて存在した大学前駅（だいがくまええき）は、茨城交通茨城線に属する鉄道駅でした。現在、その跡地の大部分は、茨城交通茨大前営業所の敷地として利用されています。この駅は、約半世紀にわたる歴史の中で複数回その名称を変え、周辺地域の交通網の一端を担いました。

大学前駅の歴史は、1928年（昭和3年）7月21日に「兵営前駅」として営業を開始したことに遡ります。開業当初の名称は、当時の地域の様子を反映したものと考えられますが、後に変更されることになります。その正確な時期は明らかになっていませんが、1940年から1942年の間に「南袴塚駅」へと改称されたことが判明しています。この名称変更の背景にある具体的な理由は不明ですが、地域の地名や状況の変化に関連している可能性が考えられます。

さらなる転換期は、太平洋戦争終戦直後の1945年（昭和20年）6月1日に訪れました。この日、上水戸駅から当駅までの区間が電化されたのです。これにより、茨城交通が運営する別の路線である水浜線の電車が当駅まで乗り入れを開始しました。水浜線は、水戸市街地と大洗方面を結ぶ重要な路線であり、この乗り入れによって、当駅は茨城線と水浜線の結節点としての役割も果たすようになりました。しかし、この連携も恒久的なものではありませんでした。

南袴塚駅として機能していた時期を経て、駅名は再び変更されます。これも正確な時期は不明ですが、1949年（昭和24年）以降に「大学前駅」と改称されたとされています。この名称は、近隣に大学が存在することを示唆しており、当時の地域における大学の存在感が反映された名称と言えるでしょう。しかし、水浜線との接続は長くは続きませんでした。高度経済成長期に入り、自動車交通の発達など社会状況の変化に伴い、多くの地方鉄道路線がその役割を終えていきます。水浜線もその例外ではなく、1965年（昭和40年）6月1日に廃止されました。これにより、大学前駅への水浜線電車の乗り入れも終了となりました。

水浜線との接続を失った後も、大学前駅は茨城交通茨城線の駅として機能し続けました。しかし、茨城線自体もまた、時代の波に逆らうことはできませんでした。最終的に、大学前駅は1971年（昭和46年）2月11日をもって廃駅となりました。これは、茨城線の赤塚駅から当駅までの区間がこの日限りで廃止されたことによるものです。こうして、兵営前駅として誕生し、南袴塚駅、そして大学前駅へと名前を変えながら地域に根ざした駅の歴史は、約43年の歳月を経て閉じられました。

駅構造については、供用されていた当時、1面2線の構造を有しており、列車交換が可能な設備を備えていたことが記録されています。これは、単なる中間駅としてだけでなく、列車の行き違いを行うための重要な駅であったことを示しています。

廃駅となった大学前駅の場所は、時を経てその姿を変えました。かつての駅敷地の大部分は、現在、茨城交通のバス営業所である茨大前営業所の敷地の一部として利用されています。駅舎などの痕跡は残っていませんが、その場所は現在も茨城交通の施設として活用されており、地域の交通を支える役割を形を変えて担い続けています。大学前駅は物理的な姿を失いましたが、その存在はかつてこの地にあった鉄道の歴史の一部として記憶されています。

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