大山正

大山 正（おおやま ただす）氏は、1928年1月21日に東京府で生まれ、2019年12月16日に生涯を閉じた日本の心理学者です。その専門は、実験心理学と色彩学にわたり、特に視知覚や色彩に関する実証的な研究で知られています。

東京大学文学部を1951年に卒業後、同大学院で特別研究生として研鑽を積み、1956年に課程を修了しました。その後、北海道大学文学部で講師としてキャリアを開始し、心理学の研究と教育に携わります。1961年には「視知覚における図に関する研究」で東京大学より文学博士の学位を取得し、この分野における研究者としての地位を確立しました。翌年には助教授に昇進しています。

1963年にはフルブライト研究員としてアメリカのコロンビア大学に留学し、国際的な視野を広げました。帰国後、1965年に千葉大学文理学部の助教授となり、1968年には同大学の教授に昇任しました。千葉大学での活動を経て、1980年には母校である東京大学文学部の教授に迎えられ、日本の心理学研究の中心地で指導的役割を果たしました。

1988年に東京大学を定年退官後、日本大学文理学部の教授に就任し、引き続き教育・研究活動に従事しました。1995年から1998年までは同大学文理学部長を務め、学部運営においてもその手腕を発揮しました。1998年に日本大学を定年退職しましたが、その後も研究者、教育者としての活動を続けました。

大山氏の研究は、実験心理学の手法を用いて視知覚のメカニズムや色彩の知覚現象を深く探求することに重点が置かれました。特に、図形残効、幾何学的錯視、色彩面の進出・後退現象、対象間の比率関係など、多様な視覚・色彩現象を精神物理学的な手法を用いて定量的に分析しました。

また、精神物理学における新たな測定法として「移調法（Method of transposition or equal-appearing relations）」を提案し、その適用と意義について論じるなど、研究方法論の発展にも寄与しました。共感覚や仮現運動、ヒューマンエラーの心理学といった幅広いテーマにも関心を持ち、多くの共同研究を行っています。

その研究成果は多くの著書や論文として発表されています。単著としては、『色彩心理学入門 ニュートンとゲーテの流れを追って』、『視覚心理学への招待 見えの世界へのアプローチ』、『知覚を測る 実験データで語る視覚心理学』などがあり、専門知識を分かりやすく解説しています。また、『医学のための心理学』、『建築のための心理学』、『応用心理学講座』など、他分野との連携を意識した共編著も多数刊行しており、心理学の応用的側面にも深い関心を示していました。これらの著作は、日本の心理学教育において重要な役割を果たしました。

学会活動においては、1994年から2000年まで日本学術会議の会員を務め、学術振興に貢献しました。長年の功績に対して、2007年には日本心理学会国際賞特別賞、2009年には日本色彩学会賞を受賞しています。

大山正氏は、実験心理学と色彩学の分野における卓越した研究者であり、東京大学をはじめとする教育機関で多くの後進を育成しました。その実証的な研究姿勢と幅広い学問的関心は、日本の心理学の発展に enduring な足跡を残しました。

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