大崎 (大奥御年寄)

大崎の生涯と大奥での影響力

大崎（おおさき）は、江戸時代に徳川幕府の第11代将軍・徳川家斉付きの大奥御年寄として知られる人物です。その生涯については多くの不明点がありますが、彼女の影響力や役割は大きかったといわれています。

経歴と大奥での役割

大崎の名前は、大奥における通称であり、彼女の出自についてははっきりとした記録がありません。ある説では、彼女は徳川家斉の乳母であったとされますが、「徳川諸系譜」によると、もともとは一橋家に仕えており、家斉が誕生する際には御誕生御用掛、つまり助産婦としての役割を担っていたと言われています。

彼女は成長するにつれて江戸城の西の丸に移り、安永7年（1778年）ごろの「分限帳」では、御客会釈（おきゃくあしらい）を担当していたことが記録されています。これは、大奥における重要な役職の一つです。この時期、大崎は大奥の運営においてその存在感を示していました。

1731年に、家斉の将軍世子の擁立が公表される前の天明元年（1781年）、彼女は本丸大奥の御年寄に昇進します。これは彼女のキャリアの中でも重要な転換点でした。

大崎と松平定信の関係

天明7年（1787年）、10代将軍・徳川家治の死後、田沼意次から松平定信に老中が交代することになり、これが大崎の政治的立場に大きな影響を与えたとされています。定信とは親しい関係にあり、「表は松平定信・奥は大崎」と称されるほどの膨大な権力を持っていました。

しかし、定信が老中に就任した後、初めて彼と会った際に「（老中と御年寄は）御同役であるから、奥向きのことは御相談申して…」という発言をしたことが、逆に定信を怒らせる結果となりました。「同役とは何だ。大奥に老中があるのか」との反応から以来、両者の間に深い亀裂が生まれます。

対立とその後

この対立の影響により、定信が大奥に改革の手を入れようとする際、大崎は早々に大奥を退くこととなりました。その後の彼女の人生については詳細がわかっていませんが、家斉時代の大奥を代表する御年寄として取り上げられることが多いのは事実です。

なお、天明7年（1787年）の「分限帳」では、大崎は序列7位の御年寄として記録されており、他の御年寄と比べて高評価を得ることはできず、特に高岳、滝川、野村らには及ばない存在でした。彼女の権力は絶対的なものではなかったことがわかります。

関連作品

大崎はその独特なキャラクターから、さまざまなメディアで表現されています。フジテレビのドラマ『大奥 第一部〜最凶の女〜 第二部〜悲劇の姉妹〜』（2016年）では浅野ゆう子が、また、NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』（2025年）では映美くららが演じる予定です。

参考文献

彼女について詳細に知りたい方には、以下の書籍をお勧めします。『徹底図解 大奥―将軍のために用意された秘密の空間』（榎本秋、新星出版社、2008年）や『江戸の悪党』（山下昌也、学研パブリッシング、2010年）が特に有用でしょう。

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