大川郡

香川県に存在した大川郡（おおかわぐん）は、明治から平成にかけて約100年間にわたり使用された行政上の区分です。

この郡は、1899年（明治32年）4月1日、明治政府による郡制の施行に伴い、それまで別個に存在していた大内郡と寒川郡の区域を統合して誕生しました。発足当初、大川郡には3町20村が含まれていました。

その郡域は、概ね現在のさぬき市（ただし、後の時代に木田郡から編入された旧三木町の一部である昭和地区を除く）と、東かがわ市の全域に相当します。歴史的に見ると、現在のさぬき市にあたる地域は旧寒川郡、東かがわ市にあたる地域は旧大内郡の流れを強く汲んでいます。

発足当初の町村構成は以下の通りでした。

旧大内郡域（1町8村）：相生村、小海村、引田村、松原村、福栄村、白鳥村、三本松町、誉水村、丹生村
旧寒川郡域（2町12村）：松尾村、富田村、五名山村、石田村、神前村、造田村、長尾村、奥山村、志度町、鴨部下庄村、鴨部村、小田村、津田町、鶴羽村

大川郡は、その歴史の中で行政区画の変更を幾度となく経験します。

明治後期から大正期にかけては、村が町に昇格する動きが活発化しました。1909年（明治42年）に引田村が引田町に、翌1910年（明治43年）には松原村が町制を施行して白鳥本町と改称。1915年（大正4年）には長尾村が長尾町となりました。また、村名の改称も行われ、1916年（大正5年）に鴨部下庄村が鴨庄村に、1919年（大正8年）に奥山村が多和村に、1923年（大正12年）には五名山村が五名村へと名称を変えました。この間、1923年には郡会が廃止され、1926年（大正15年）には郡役所もその役割を終え、大川郡は地域区分としての性格が強まります。

第二次世界大戦後の昭和の大合併期には、町村再編が加速しました。1954年（昭和29年）には誉水村と丹生村が合併して大内町が誕生。翌1955年（昭和30年）には、志度町、鴨庄村、小田村が合併して新たな志度町となり、その後大内町と三本松町が合併して改めて大内町となるなど、大規模な統合が進みました。同年、引田町、相生村、小海村が合併して引田町に、長尾町と多和村が合併して長尾町に、富田村と松尾村が合併して大川村が発足。さらに白鳥本町、白鳥村、五名村、福栄村が合併して白鳥町に、神前村と石田村が合併して寒川村となりました。1956年（昭和31年）には津田町と鶴羽村が合併して新たな津田町が、長尾町と造田村が合併して新たな長尾町が誕生し、鴨部村が志度町に編入されるなど、複雑な再編が続きました。これにより、郡内の町村数は大きく減少します。1959年（昭和34年）には長尾町が木田郡三木町の一部を編入する区域変更もありました。

昭和後期には、大川村が大川町に、寒川村が寒川町にそれぞれ町制を施行し、郡内は8つの町で構成される形となりました（1961年）。

そして、21世紀に入り、平成の大合併の波が訪れます。2002年（平成14年）4月1日、志度町、長尾町、津田町、寒川町、大川町の5町が合併してさぬき市が誕生し、大川郡から離脱しました。郡に残ったのは白鳥町、引田町、大内町の3町のみとなりました。

翌2003年（平成15年）4月1日、その残る白鳥町、引田町、大内町の3町が合併して東かがわ市が誕生しました。これにより、大川郡に所属する自治体がなくなり、同日をもって大川郡は消滅しました。これは、1899年の郡再編以降、香川県内で初めて郡が消滅した事例となりました。

明治以降の約104年間、大川郡は香川県の東部地域を束ねる行政単位として機能し、時代ごとの社会変化に対応しながらその形を変えていきましたが、市町村合併の進行により、その歴史的役割を終えることとなりました。現在のさぬき市と東かがわ市に、その区域の多くが引き継がれています。

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