大平悦子

新潟県魚沼市の地方政治において、特筆すべき経歴を持つ人物に大平悦子（おおだいら えつこ）がいます。1956年（昭和31年）10月9日、現在の魚沼市である新潟県北魚沼郡小出町に生まれた彼女は、富士短期大学経済学科で学びました。その後の歩みの中で、彼女は新潟県において初めて誕生した女性首長として、県の政治史に新たなページを加えました。魚沼市では、第2代および第3代の市長として合計2期にわたり市政を担いました。

大平氏が公的な活動に関わるようになったのは、1998年（平成10年）に小出町の教育委員に就任したことから始まります。教育行政に携わる中で、彼女は地域の課題や行政の仕組みについて理解を深めていきました。さらに、市町村合併に関する協議会委員としても活動し、新しいまちづくりの議論に加わりました。これらの経験が、彼女を政治の世界へと導く契機となります。

2003年（平成15年）、大平氏は小出町議会議員選挙に出馬し、当選を果たします。議員として活動する中で、2004年（平成16年）11月1日には、北魚沼郡内の6町村（川口町を除く）が合併し、新たに魚沼市が誕生しました。この合併に伴い、旧町村の議員は一定期間、魚沼市議会議員として在任することとなります（在任特例）。市議会では、合併後の議会のあり方が議論される中で、自主解散を求める動きがありましたが、2005年（平成17年）3月28日に議員発議は否決されました。この決定に賛成する一部の議員が辞職願を提出しましたが、大平氏がその中に含まれていたかどうかは明確ではありません。しかし、同年7月に行われた魚沼市議会議員選挙で、大平氏は再び当選を果たし、魚沼市議会議員として活動を続けました。

市議会議員としての経験を積んだ後、大平氏は市長への挑戦を決意します。2008年（平成20年）11月30日に執行された魚沼市長選挙に無所属で立候補。現職の星野芳昭氏を破り、見事に初当選を果たしました。同年12月12日に第2代魚沼市長に就任。新潟県初の女性首長として、地域の期待を背負って市政運営にあたることになります。

続く2012年（平成24年）12月2日に行われた魚沼市長選挙では、大平氏は再選を目指しました。この選挙には、元市議の森島守人氏や大桃聰氏ら2人の候補者が出馬しましたが、大平氏はこれらの挑戦者を退け、第3代魚沼市長として2期目の任期を務めることとなりました。

しかし、3期目を目指した2016年（平成28年）12月4日の市長選挙では、厳しい選挙戦となりました。この選挙の大きな争点の一つとなったのは、魚沼市の新しい庁舎建設計画でした。当時、市は合併前の各町村役場を活用しており、新庁舎の建設は喫緊の課題とされていました。大平氏は、新庁舎を市民が多目的に利用できる複合施設と位置づけ、約50億円を投じる建設計画を推進する立場を取りました。これに対し、対立候補として出馬した元市議で新人の佐藤雅一氏は、より簡素な建物を提案し、建設費用を30億円程度に抑えるべきだと主張しました。選挙の結果、大平氏は佐藤氏にわずか240票差という僅差で敗れ、市長の座を明け渡すこととなりました。

市長退任後、大平氏は国政への道を模索します。2017年（平成29年）の第48回衆議院議員総選挙において、彼女は新潟5区からの出馬候補として名前が挙がります。同年9月23日、民進党県連、社民党県連、連合新潟の三者協議を経て、大平氏を同選挙区に擁立する方針が固まります。9月25日には、無所属での出馬意向を正式に表明。さらに、10月2日には日本共産党と自由党が大平氏の推薦を決定し、共産党は予定候補を取り下げるなど、前年の参議院選挙で実現した「オール野党」体制での選挙戦に臨むこととなりました。しかし、選挙の結果、大平氏は自由民主党から出馬した前新潟県知事の泉田裕彦氏に約12,000票差で敗れ、国政進出は叶いませんでした。

大平悦子氏は、小出町議会議員、魚沼市議会議員、そして新潟県初の女性首長として魚沼市長を2期務めるなど、地方自治の現場で長年にわたり政治活動を行いました。その後、国政にも挑戦するなど、その活動範囲は多岐にわたりました。彼女の経歴は、地域に根ざした政治から始まり、県政、そして国政へと視野を広げていった政治家の一つのあり方を示しています。

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