大幸車庫

大幸車庫

愛知県名古屋市東区の南部に位置する大幸南一丁目に、名古屋市交通局が運営する主要な鉄道施設の一つ、大幸車庫（だいこうしゃこ）があります。この施設は、名古屋市営地下鉄の環状線である名城線、そしてその南端から分岐し港区方面へ向かう名港線で日々の運行を支える車両たちのための大切な拠点として機能しています。

沿革と特徴

この車庫が誕生したのは、2000年1月19日に実施された名城線の大曽根駅から砂田橋駅までの延伸区間開業を間近に控えた、1999年12月20日に開設されました。この車庫が特筆される点は、名古屋市営地下鉄において初めて地下空間を活用して建設された車両基地であることです。市街地における用地確保の難しさや、地上の景観への配慮といった現代的な課題に対応するため、地下に大規模な施設を設けるという革新的な手法が採用されました。

構造と規模

車庫の内部構造は地下2階建てとなっており、その規模は圧巻です。長さ約570メートル、幅約40メートルという広大な空間が地下に広がっています。興味深いことに、この車庫の敷地の一部は、すぐ隣に立つ名古屋のシンボルであるナゴヤドーム（現在のバンテリンドーム ナゴヤ）の地下部分と重なっています。地下に建設された車両基地としては、この大幸車庫は国内でも指折りの大きさを誇るとされており、その技術的なチャレンジと規模は特筆に値します。

駅との接続

車両が車庫へ出入りするためのルートは、名城線の駅の一つであるナゴヤドーム前矢田駅から分岐しています。具体的には、名城線の左回り（2番線）ホームの、砂田橋駅方面に向かう端部から車庫への引き込み線が地下深くへと延びており、車庫の地下2階に直接接続しています。そして、車庫内の地下1階へのアクセスは、この地下2階からさらに内部で分岐する連絡線を通じて可能となっています。このように、駅直下や近傍から地下で直接繋がる構造は、効率的な入出庫を実現しています。

機能と役割

この大規模な地下空間は、最大で186両もの車両を留置する能力を備えています。これは、名城線・名港線で活躍する6両編成の列車に換算すると、合計31編成分の車両を一度に収容できる計算になります。車両基地としての最も基本的な役割は、日中や夜間の運用を終えた車両を安全に保管することですが、大幸車庫の機能はそれだけにとどまりません。車両が常に最適な状態で運行できるよう、日常的な点検や整備を行うための検査設備や、車両を清潔に保つための洗車設備も完備しています。特に、車両の基本的な状態確認を行う「列車検査」は、主にこの大幸車庫で集中的に実施されています。現在、名城線と名港線で運行されている2000形という形式の車両たちは、この大幸車庫を拠点として、日々の保守・管理を受けているのです。

まとめ

名古屋市営地下鉄のネットワークにおいて、大幸車庫は単なる車両の駐車場ではなく、安全で安定した輸送サービスを提供するための重要なメンテナンス・物流拠点として、その地下空間で静かに、しかし確実に機能し続けています。その大規模な地下施設は、都市の限られた空間を最大限に活用し、効率的な鉄道運営を可能にする現代的なインフラストラクチャーの一例と言えるでしょう。

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