大日本帝国 (映画)

映画『大日本帝国』

『大日本帝国』（だいにっぽんていこく）は、1982年8月7日に公開された東映制作の戦争映画であり、180分の長編作品です。本作は「シンガポールへの道」と「愛は波濤をこえて」の二部構成からなっており、製作には舛田利雄監督と笠原和夫脚本家がタッグを組んでいます。この作品は、1980年代初頭に公開された一連の戦争映画の一環であり、相互に関連する『日本海大海戦 海ゆかば』を含む3部作の一部として知られています。

製作経緯

映画の企画を立てたのは、当時の東映社長であった岡田茂氏です。彼は、前作『二百三高地』の成功を受けて再び戦争映画を製作することを決定しました。岡田氏からの指示は、「太平洋戦争における日本の勝利だけを描く」内容であり、特に東條英機を中心としたストーリー展開を希望されました。しかし、脚本家の笠原和夫氏は、岡田氏の意図を無視し、昭和天皇の戦争責任についても言及する内容を盛り込むことにしました。これにより、映画は議論を呼び起こし、監督も「当時を知る者として大切なことを伝える必要があった」と述懐しています。

物語の概要

物語は、ABCD包囲網によって日本が窮地に陥った状況から始まります。対立するアメリカとの和解を図るべく動く日本政府でしたが、強硬派の意見に押されて対米開戦を決断することになります。天皇は、強硬派のリーダーである東條英機を首相に任命しつつ、開戦を回避するように指示しますが、最終的には真珠湾攻撃を承認することになります。

主人公の小田島剛一は陸軍士官学校で少尉に任じられ、彼の友人である江上孝は恋人の目の前で特高警察に捕まります。江上は、戦争を生き延びるために不本意ながら軍隊へ志願します。もう一人の登場人物である床屋の小林幸吉も、結婚直後に戦争に駆り出されます。彼らは日本軍のマレー作戦やシンガポール攻略戦に従軍し、戦争の現実に直面していくのです。

この戦争は、彼らに単純な勝利の構図を期待させましたが、実際には地元住民との激しい抵抗や、思いがけない悲劇に直面します。小林は、友軍が戦死する中で自らも負傷し、彼らが抱える複雑な思いを描き出します。

また、戦況が悪化する中で、東條は孤立し、サイパン島対米軍戦において敗北を喫します。映画は、戦争の悲惨さと人々の苦悩に焦点を当て、特に女性視点から描いたストーリーも発展します。

評価と影響

本作品は、戦争の悲劇をリアルに描写しかつ日本の当時の状況を映し出す一方で、時代を反映したさまざまな解釈を生む役割も果たしました。評価は分かれており、一部では天皇への批判が含まれているとの見方もなされました。監督の舛田利雄は、戦争を経験した世代が作った最後の大作とも捉えられており、この後は戦争を扱った作品が減少したと指摘されています。

最後に、この映画は鑑賞者に多くのメッセージを伝え、戦争の影で生きた人々の声を代弁しています。戦争の歴史を振り返る重要な作品として、今も関心を集めています。

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