大明一統志

『大明一統志』の概要

『大明一統志』（だいみんいっとうし）は、明代に編纂された重要な地理書であり、1461年に完成しました。この書物は、全国の地形や文化、歴史を詳しく記述しており、全90巻から成り立っています。『大明一統志』は、明王朝成立以降、地域ごとの情報をまとめた地方志の集積をもとに総合的な地理書として編纂されたことが特徴です。

成立の背景

中国では、統一された王朝が成立するたびに地理書が編纂される慣例がありました。北宋の『太平寰宇記』を始めとする前例を経て、明代の洪武帝・永楽帝の時代にも各地の地方志が充実。その成果は257種に達しました。洪武帝の下で計画された『大明志書』は記録には残っていませんが、その後の永楽帝の指導のもとで全国ほどの地理書が制作されましたが、これは未完のままでした。

その後、景泰帝のもとで編纂が進み、1456年には『寰宇通志』が完成し、これを改訂したものが『大明一統志』となったのです。英宗によってまとめられたこの地理書は、明代のさまざまな地域に関する情報が豊富に含まれています。

構成と特徴

『大明一統志』の構成は非常に詳細で、多くの地図が含まれています。書の冒頭には「大明一統之図」と呼ばれる地図が掲載され、その後、全国を直隷（京師・南京）と13の布政使司に分け、各地域の情報が記載されています。各布政使司に属する府や州に関する情報は、里程や沿革、県の一覧、地理的特徴や文化、名所、学び舎、遺跡に至るまで網羅的に記述されています。

特に、各地の風俗や自然環境は詳細に描写され、利用者が地理的理解を深められるよう工夫されています。最終の2巻には外夷に関する情報も含まれており、その簡潔さは他国の紹介書としての側面をも持っています。

影響と評価

『大明一統志』は、明代における地理書編纂の重要な一例であると同時に、後の時代に大きな影響を与えました。朝鮮では15世紀からこの書の影響を受け、1481年には『東国輿地勝覧』という全国地誌が編纂され、その後の改訂を経て1530年に完成を見ました。この書は、地方の情報をまとめる「邑誌」の編纂の土台ともなりました。

また、日本の江戸時代にも『大明一統志』からの影響が顕著で、数多くの地方志が同様の形式で編纂されました。代表的なものに『芸備国郡志』や『会津風土記』、さらには明治初年の『大日本国誌』があります。

批判

ただし、顧炎武などの学者からは『大明一統志』に多くの誤りがあるとの批判も寄せられており、その信頼性について疑問を呈する声も存在しました。

『大明一統志』は、中国の地理書としての位置づけにおいて非常に重要であり、周辺国や日本における地理的理解を深める基盤ともなっています。今日においても、その存在は高く評価され続けています。

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