大月薫

大月薫とは

大月薫（おおつき かおる、1888年8月6日 - 1970年12月21日）は、中華民国の政治家、孫文の妻として知られる人物です。彼女の人生は、激動の時代を背景に、愛と別れ、再会と家族の絆に彩られたものでした。

孫文との出会い

1898年、薫は横浜中華街で、後に夫となる孫文と初めて出会いました。当時、薫は生糸商人の大月金次（素堂）の娘で、横浜大火で被災し、家族で知人の華僑、温炳臣の家に一時避難していました。温炳臣は孫文と同郷の貿易商で、孫文を支援する人物でした。この避難先で、孫文は１階に住んでおり、二人は出会いを果たします。

1901年、孫文は薫の父に求婚を申し込みますが、この時は拒否されます。しかし、その1年後、孫文は薫本人に直接求婚し、二人は結婚することになりました。

結婚と別れ

1902年に婚約した二人でしたが、1903年以降、孫文が海外へ行くことが多くなり、連絡が途絶えがちになります。しかし、1905年に孫文が再来日し、横浜の浅間神社で結婚式を挙げ、薫は子を身ごもります。1906年5月、二人の間に娘、宮川冨美子が誕生しますが、その直前に孫文は中国へ帰国し、薫とは離婚しました。孫文からの送金は途絶え、父の仕事も不況となり、薫は生活のために劇場のチケットもぎりの仕事をして家計を支えました。

娘との別れと再婚

娘の冨美子は、戸籍上は薫の妹として届け出られ、1911年に横浜の魚行商人の宮川梅吉家に養女に出されました。その後、紡績工場で働き、結婚しました。孫文は「日本に娘がいる」と友人に話していましたが、娘のことは詳しく知らなかったようです。娘と別れた後、薫は2度再婚しました。2人目の夫となった栃木県足利市の東光寺住職・実方元心との間には2人の子供をもうけています。

親子の再会

1955年、冨美子は自分が孫文の子であることを知り、母親の再婚先である東光寺を訪ね、薫と再会を果たします。長い間、会えなかった親子は、ここで再びつながりを取り戻しました。

死とその後

大月薫は1970年に82歳で亡くなりました。孫文との結婚、離婚、娘との別れと再会、そして二度の再婚と、彼女の人生は波乱に満ちたものでした。

2008年には、冨美子の息子（孫文と大月薫の孫）である宮川東一が『日本に遺された孫文の娘と孫』を発表しています。また、慶應義塾大学准教授の宮川祥子は、大月薫の曾孫にあたります。

大月薫の生涯は、激動の時代を生きた女性の強さと、家族の絆の深さを物語っています。

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