大橋宗与 (3代)
三代大橋宗与（さんだいおおはしそうよ、本来の表記は大橋宗與）は、1648年（慶安元年）に生まれ、1728年5月13日（享保13年4月5日）に没した江戸時代の将棋棋士です。彼は、将棋の家元三家の一つである大橋分家の三代目当主を務め、六世名人にも就位しました。初代大橋宗桂の曾孫にあたり、初代大橋宗与の孫、二代大橋道仙の子、そして四代大橋宗与となる大橋宗民の父でもあります。
宗与は、父である二代道仙が1659年（万治2年）に亡くなった後、大橋分家の家督を継承しました。公的な舞台である御城将棋には、1682年（天和2年）に初めて登場します。当時の将棋界は、三世名人であった初代伊藤宗看を中心としており、宗看の実子で大橋本家を継承した五代大橋宗桂や、宗看の養子で伊藤家を継いだ二代伊藤宗印といった実力者がいました。宗与は、彼らと比べると棋力で見劣りしていたとされています。
特に五代大橋宗桂との間には、後に騒動となるエピソードがあります。1685年（貞享2年）、宗与は宗桂に角落ちで勝利したことを実績として、自身の対局手合いを角落ちから香落ちに変更してほしいと、宗桂を通さずに直接寺社奉行に願い出ました。これは宗桂の強い反発を招き、事態は紛糾します。宗桂の抗議にも関わらず、同年に行われた御城将棋での宗桂との対局は、宗与の要望通り香落ちと角落ちの二番で行われましたが、結果は宗与の二連敗に終わりました。その後も1689年（元禄2年）には、宗桂に角落ちで敗れるなど、上位者への挑戦はなかなか実を結びませんでした。
1691年（元禄4年）に三世名人宗看が引退すると、五代大橋宗桂が四世名人に襲位します。1694年（元禄7年）には、御城将棋での対局を命じられていた宗与が、理由は明らかではないものの、当日に出仕しませんでした。これにより御城将棋が中止となる異例の事態が発生し、この件で宗桂は寺社奉行から叱責を受けることとなりました。
1713年（正徳3年）に宗桂が亡くなると、年下の二代伊藤宗印が五世名人に就位します。宗印との対局においては、宗印が下手番となる香落ち戦では10勝2敗と大きく勝ち越しましたが、互角の平手戦では9局すべてに敗れるなど、上位には及ばない成績でした。
1716年（享保元年）に八段に昇段した際、恒例として詰め将棋集の献上を命じられました。そして1723年（享保8年）12月2日に五世名人宗印が死去すると、同年のうちに宗与が六世名人に襲位します。この時、宗与は76歳であり、当時としては異例の高齢での就位でした。この名人位は、当時若手として将来を嘱望されていた三代伊藤宗看が一人前の棋士として成熟するまでの「中継ぎ」的な役割だったとも評されています。また、近年の研究により、五世名人宗印が亡くなる以前に、将棋所（将棋界の最高権力者）の権限が宗与に譲渡されていたことも明らかになっています。
六世名人となった宗与は、1724年（享保9年）には77歳で御城将棋の舞台に上がりました。これは御城将棋が始まった歴史上、最も高齢での出勤記録として後世に名を残しています。この対局では、大橋本家を継いだばかりであった八代大橋宗桂（大橋宗寿）と飛香落ちで対戦しましたが、敗れています。1727年（享保12年）1月には、寺社奉行の指示により、将棋と囲碁の起源に関する由来書を提出することとなり、宗与は将棋家元三家と囲碁家元四家の当主たちと協議の上、これを提出しました。
1728年（享保13年）に宗与は死去しました。宗与は晩年、次期名人の最有力候補であった三代伊藤宗看よりも、自身の子である大橋宗民（後の四代宗与）を優位に立たせようと画策していました。将棋所の権限を利用し、宗民を三代宗看より先に八段に昇段させたのです。これに対し、他の将棋家元二家（大橋本家、伊藤家）が異議を唱え、1724年（享保9年）には寺社奉行から注意を受ける事態となっていました。死に際して、宗与は次期名人について、三代伊藤宗看と子息宗民との「争い将棋」によって決定すべし、という遺言を残します。この遺言は再び将棋界に波紋を広げましたが、寺社奉行が異例の仲裁に乗り出した結果、宗与の遺言は認められず、三代伊藤宗看が七世名人の座に就くことになりました。
宗与が八段昇段時に献上した詰め将棋集は、『象戯作物』と称されましたが、1833年（天保4年）に出版された際の題名である『将棋養真図式』として広く知られています。別名『宗与図式』とも呼ばれ、林信充が序文を寄せています。この詰め将棋集には、初代大橋宗看の作品集『将棋駒競』からの改変や、完成度が高くないと見られるものが多く含まれており、作風にも一貫性が見られないことが指摘されています。そのため、急ぎ体裁を整えるために門弟たちの作品を寄せ集めたものではないかと推測されています。総じて後世の評価は芳しくないものの、中には宗与自身の独自の工夫が見られる作品も含まれているとされています。
このように、三代大橋宗与は、上位棋士に苦戦しながらも家元の当主としての役割を果たし、高齢での名人就位や御城将棋最年長記録を樹立しました。その一方で、後継者問題においては波乱を招き、将棋界の歴史に独特の足跡を残した人物と言えます。
宗与は、父である二代道仙が1659年（万治2年）に亡くなった後、大橋分家の家督を継承しました。公的な舞台である御城将棋には、1682年（天和2年）に初めて登場します。当時の将棋界は、三世名人であった初代伊藤宗看を中心としており、宗看の実子で大橋本家を継承した五代大橋宗桂や、宗看の養子で伊藤家を継いだ二代伊藤宗印といった実力者がいました。宗与は、彼らと比べると棋力で見劣りしていたとされています。
特に五代大橋宗桂との間には、後に騒動となるエピソードがあります。1685年（貞享2年）、宗与は宗桂に角落ちで勝利したことを実績として、自身の対局手合いを角落ちから香落ちに変更してほしいと、宗桂を通さずに直接寺社奉行に願い出ました。これは宗桂の強い反発を招き、事態は紛糾します。宗桂の抗議にも関わらず、同年に行われた御城将棋での宗桂との対局は、宗与の要望通り香落ちと角落ちの二番で行われましたが、結果は宗与の二連敗に終わりました。その後も1689年（元禄2年）には、宗桂に角落ちで敗れるなど、上位者への挑戦はなかなか実を結びませんでした。
1691年（元禄4年）に三世名人宗看が引退すると、五代大橋宗桂が四世名人に襲位します。1694年（元禄7年）には、御城将棋での対局を命じられていた宗与が、理由は明らかではないものの、当日に出仕しませんでした。これにより御城将棋が中止となる異例の事態が発生し、この件で宗桂は寺社奉行から叱責を受けることとなりました。
1713年（正徳3年）に宗桂が亡くなると、年下の二代伊藤宗印が五世名人に就位します。宗印との対局においては、宗印が下手番となる香落ち戦では10勝2敗と大きく勝ち越しましたが、互角の平手戦では9局すべてに敗れるなど、上位には及ばない成績でした。
1716年（享保元年）に八段に昇段した際、恒例として詰め将棋集の献上を命じられました。そして1723年（享保8年）12月2日に五世名人宗印が死去すると、同年のうちに宗与が六世名人に襲位します。この時、宗与は76歳であり、当時としては異例の高齢での就位でした。この名人位は、当時若手として将来を嘱望されていた三代伊藤宗看が一人前の棋士として成熟するまでの「中継ぎ」的な役割だったとも評されています。また、近年の研究により、五世名人宗印が亡くなる以前に、将棋所（将棋界の最高権力者）の権限が宗与に譲渡されていたことも明らかになっています。
六世名人となった宗与は、1724年（享保9年）には77歳で御城将棋の舞台に上がりました。これは御城将棋が始まった歴史上、最も高齢での出勤記録として後世に名を残しています。この対局では、大橋本家を継いだばかりであった八代大橋宗桂（大橋宗寿）と飛香落ちで対戦しましたが、敗れています。1727年（享保12年）1月には、寺社奉行の指示により、将棋と囲碁の起源に関する由来書を提出することとなり、宗与は将棋家元三家と囲碁家元四家の当主たちと協議の上、これを提出しました。
1728年（享保13年）に宗与は死去しました。宗与は晩年、次期名人の最有力候補であった三代伊藤宗看よりも、自身の子である大橋宗民（後の四代宗与）を優位に立たせようと画策していました。将棋所の権限を利用し、宗民を三代宗看より先に八段に昇段させたのです。これに対し、他の将棋家元二家（大橋本家、伊藤家）が異議を唱え、1724年（享保9年）には寺社奉行から注意を受ける事態となっていました。死に際して、宗与は次期名人について、三代伊藤宗看と子息宗民との「争い将棋」によって決定すべし、という遺言を残します。この遺言は再び将棋界に波紋を広げましたが、寺社奉行が異例の仲裁に乗り出した結果、宗与の遺言は認められず、三代伊藤宗看が七世名人の座に就くことになりました。
宗与が八段昇段時に献上した詰め将棋集は、『象戯作物』と称されましたが、1833年（天保4年）に出版された際の題名である『将棋養真図式』として広く知られています。別名『宗与図式』とも呼ばれ、林信充が序文を寄せています。この詰め将棋集には、初代大橋宗看の作品集『将棋駒競』からの改変や、完成度が高くないと見られるものが多く含まれており、作風にも一貫性が見られないことが指摘されています。そのため、急ぎ体裁を整えるために門弟たちの作品を寄せ集めたものではないかと推測されています。総じて後世の評価は芳しくないものの、中には宗与自身の独自の工夫が見られる作品も含まれているとされています。
このように、三代大橋宗与は、上位棋士に苦戦しながらも家元の当主としての役割を果たし、高齢での名人就位や御城将棋最年長記録を樹立しました。その一方で、後継者問題においては波乱を招き、将棋界の歴史に独特の足跡を残した人物と言えます。
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