大泉村 (東京府)

大泉村：東京練馬区の礎を築いた村の歴史

大泉村は、現在の東京都練馬区北西部に位置する大泉地区の区域をかつて治めていた村です。1891年（明治24年）に誕生し、1932年（昭和7年）に東京市に編入されるまで、およそ40年間の歴史を刻みました。本稿では、大泉村の成立から消滅までの歴史、地理的特徴、そしてその後の発展について詳細に解説します。

地理と地名

大泉村は、現在の練馬区大泉学園町、東大泉、西大泉、西大泉町、南大泉、大泉町といった地域に相当します。村内には小榑（こぐれ）、橋戸（はしど）、上土支田（かみどしだ）の3つの大字が存在し、それぞれ明治初期以前の旧村名に由来しています。小榑は村の西部から北部、橋戸は東部、上土支田は南部に位置し、村役場は小榑に置かれていました。村の名前である「大泉」は、村内を流れる小井戸川（現在の白子川）とその源流である井頭池にちなみ、当初は「小泉村」が提案されましたが、のちに「大泉村」となりました。この改名は、読み間違いを防ぐため、または村の更なる発展を願って行われたと推測されています。

歴史：複雑な合併と発展

江戸時代、大泉村の区域は武蔵国新座郡と豊島郡にまたがり、複数の村が存在していました。明治維新後の地方制度改革に伴い、これらの村々は合併と分離を繰り返しました。1889年（明治22年）の町村制施行後も、小榑村と橋戸村が合併した榑橋村、上土支田村などが存在していました。

しかし、小学校運営の財政負担軽減のため、1891年、それまで埼玉県と東京府にまたがっていた複数の村が合併し、新たな「大泉村」が誕生しました。これは、埼玉県新座郡の榑橋村と新倉村の一部、そして東京府北豊島郡の上土支田村が合併した結果です。この合併は、地理的な近接性と学校の統合という現実的な課題解決策として行われました。

学園都市計画と東京市編入

1924年（大正13年）、箱根土地会社による大規模な学園都市計画が村の北部で開始されました。碁盤目状の道路網が整備され、武蔵野鉄道（現在の西武池袋線）に東大泉駅（後に大泉学園駅と改称）が開設されるなど、大泉村は急速に発展しました。この計画によって、現在の「大泉学園町」という地名も生まれました。しかし、当初計画された高等教育機関の誘致には成功しませんでした。

1932年（昭和7年）、東京市が周辺町村を編入した際に、大泉村も東京市に編入され、板橋区の一部となりました。大泉村は廃止され、その区域は北大泉町、東大泉町、西大泉町、南大泉町、大泉学園町の5つの町に分割されました。

行政、教育、文化

大泉村役場は当初、本照寺に隣接する村長宅で業務が行われていましたが、1911年に移転し、1922年には新たに村役場が建設されました。村役場の跡地は現在、大泉中島公園となっています。村内には、諏訪神社、北野神社、氷川神社などの神社や、妙福寺、本照寺などの寺院、そして大泉農商公民学校、大泉尋常高等小学校（現在の練馬区立大泉小学校）などの教育機関が存在しました。また、著名な植物学者である牧野富太郎は、1926年から大泉村に住んでいました。

交通と社会

交通面では、武蔵野鉄道（現在の西武池袋線）の開通、そして箱根土地会社によるバス路線の開設によって、大泉村は外部との接続が強化されました。清戸道や所沢道といった道路網も整備され、村の生活基盤は充実していました。

まとめ

大泉村は、明治から昭和にかけて、合併と発展、そして東京市への編入という歴史的な転換期を経験しました。学園都市計画や教育機関の設立、そして著名な人物との関わりなど、大泉村の歴史は、現在の練馬区の形成に大きく貢献したと言えるでしょう。この村の歴史を理解することは、練馬区の成り立ちを理解する上で重要な要素となります。

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