大津川 (千葉県)

大津川（おおつがわ）

大津川は、千葉県鎌ケ谷市と柏市を流れる、利根川水系に属する一級河川です。手賀川流域の約24.2%を占め、手賀沼へ流入する最大の河川として知られています。

地理

大津川の源流は、鎌ケ谷市くぬぎ山5丁目、くぬぎ山駅東口付近に位置します。そこから緩やかに東へと流れ、源流部は「串崎新田水路」と呼ばれています。この地域は、畑や果樹園が広がるのどかな風景が特徴です。

串崎新田水路は、北初富駅の北部で入道溜水路と合流し、粟野の鎌ケ谷市立第三中学校裏手付近で、松戸市五香六実を起点とする柳沢水路（小池橋水路）を合わせ、ここから「大津川」（準用河川指定区間）となります。

さらに、鎌ケ谷市立北部小学校の手前で、南初富4丁目を起点に市街地を北流してきた長谷津水路と合流すると、流れは北へと変わります。流れが広がった大津川は、母路橋より左岸がプロムナード区間（大津川緑道）となり、白幡橋から一級河川指定区間となります。

佐津間付近では、松戸市境から流れてきた南木戸水路を合わせ、柏市へと入ります。低木に覆われた谷地を流れていた大津川は、水田地帯を流れ、両岸の一部は歩道として整備されています。高柳北部で上大津川と合流し、河川改修によって整備された流路には、多くの雨水幹線が流入し、流量が増加します。

柏市中心部から続く市街地と大津ケ丘市街地に挟まれた低地を進み、最終的には手賀沼へと注ぎます。

源流部の水路が集まる地域は、「佐津間落（さつまおとし）」という別名で呼ばれることもあります。流路延長11.9kmのうち、準用河川指定区間は1,290m、一級河川指定区間は7,900m（鎌ケ谷市内1,107m、柏市内6,793m）となっています。

大津川を形成する各水路の延長は、串崎新田水路・入道溜水路が2,700m、柳沢水路（小池橋水路）が2,038m、長谷津水路が2,730m、南木戸水路が1,200mです。

また、支流の上大津川（柏市内3,200m）と、高柳新田貯留池に接続する上大津川支川（柏市内160m、松戸市内246m、松戸市内での名称は「上大津川」）も準用河川に指定されています。

治水

手賀沼土地改良事業

かつての大津川は、川幅が3〜4m程度と狭く、蛇行していました。耕作道も整備されておらず、農業用水は湧水、雨水、河川からの汲み上げ水に頼っていました。昭和初期には、下流部に設置された「竜巻の堰」からの導水が灌漑用水として利用されていました。

しかし、昭和30年代以降の高度経済成長に伴い、これらの水量は減少し、水質汚濁も進行しました。農業用水の確保が困難になり、流下能力不足による氾濫も発生するようになりました。

この状況を受け、手賀沼沿岸の水害を抑制するため、国営手賀沼干拓土地改良事業が実施され、1956年（昭和31年）に手賀排水機場が完成しました。これに伴い、周辺の基幹用水施設の整備が進められました。

手賀沼南部では、1963年（昭和38年）度から泉揚水機場が着工し、柏市、沼南町、白井町（当時）に跨る900ha以上の耕地で農業用水が確保されるようになりました。1964年（昭和39年）3月には、大津川沿岸の農家408名が手賀沼土地改良区に編入され、大津川工区が設立され、県営圃場整備事業が開始されました。

大津川については、1965年（昭和40年）2月26日告示で宮下橋より下流3,500mが一級河川に指定され、河道拡幅や農道、用排水路の整備が進められました。これらの整備は、関係農家の減歩によって用地が確保されたことによります。圃場整備事業は1970年（昭和45年）3月に完了し、暗渠排水工事や大津川架橋などの附帯工事を経て、1978年（昭和53年）度に全事業が完了しました。総事業費は7億7800万円で、うち25%が地元負担となりました。

中下流部の河川整備

大津川の中下流域では、周辺の台地部の都市化に伴い流出量が増加し、浸水被害が頻発するようになりました。そのため、千葉県は1980年（昭和55年）4月5日告示改正で一級河川指定区間を白幡橋まで延長し、同年度から広域基幹改修事業として河川改修を進めています。

関根橋より下流5,640mを全体計画区間とし、河口から順に用地取得、堤防整備、橋の架け替えなどが実施されています。2000年（平成12年）度には、千葉県、沼南町、柏市、ボランティア団体などで構成された「大津川多自然型川づくり懇談会」が組織され、大津川遊歩道などの環境整備について検討されています。

その後、河川改修は2005年（平成17年）度に総合流域防災事業として見直され、現在も継続されています。

大津川の西部では、東武野田線沿いの宅地造成が進み、雨水流出の増加に対応するため、柏市が雨水幹線の整備を進めています。大津川左岸には、第1排水区から第8排水区までの排水区が設定されており、それぞれが特定の地域からの雨水を排水しています。

特に、第3号から第6号までの雨水幹線は、本流の河川改修が進んでいなかったため、公共下水道としての整備が遅れていました。河川改修が中流部まで進んだことを受け、2000年（平成12年）度に放流協議が開始され、事業認可が進められました。しかし、千葉県による河川改修計画の見直しの影響で認可は遅延しました。

そのため、大津川左岸第3号雨水幹線では柏市の単独事業に切り替え、2004年（平成16年）度から2006年（平成18年）度までの3年間で整備が行われました。大津川左岸第6号雨水幹線では、2002年（平成14年）度から2004年（平成16年）度まで、東武野田線橋梁西側に逆井多目的調整池が整備され、貯留促進と親水空間としての機能を持たせています。また、大津川左岸第4号雨水幹線では、2009年（平成21年）度に着手し、増尾第3調整池から増尾雨水貯留池までの区間で工事が進められました。

上大津川については、東武野田線橋梁より上流部の暫定整備以外は未着手の状態でしたが、2007年（平成19年）6月10日の集中豪雨で流域の団地が部分冠水したことを受け、早期の河川整備が求められるようになりました。また、上流域の高柳新田貯留池の管理体制も問題視され、柏市は国の補助金を利用し、河道を掘り下げる工事を実施しました。その後、本流の河川整備が進み、2014年（平成26年）度には上大津川整備の現地調査と基本設計が開始され、2018年（平成30年）度の事業完了を目指しています。

上流部の河川整備

関根橋より上流区間は、1980年代以降の鎌ケ谷市内の都市化が急速に進む中で、整備が遅れていました。鎌ケ谷市は1983年（昭和58年）3月24日に白幡橋より上流を準用河川に指定し、1988年（昭和63年）に河道整備計画を策定しました。河川幅を2.8〜4mに整備し、柵渠や木柵を設置したほか、毎年度の浚渫を実施しました。

支流の長谷津水路でも、1984年（昭和59年）度から1993年（平成5年）度までボックスカルバートの敷設などの整備が進められました。千葉県も1992年（平成4年）度に白幡橋から山王橋までの区間で河道掘削と浚渫を実施し、水位を下げる効果を得ました。その後、千葉県は1993年（平成5年）度より関根橋から白幡橋までの河川整備計画を策定しましたが、整備完了区間はまだ関根橋まで達していません。

源流部では、調整池の整備も進められています。1992年（平成4年）度から1994年（平成6年）度にかけて、柳沢水路の水源に五香一文字貯留池が整備され、松戸市と鎌ケ谷市が費用を分担しました。その間、長谷津水路では水路拡幅が行われ、拡幅部分が長谷津貯留池となりました。

串崎新田水路でも串崎新田貯留池の整備が進められており、部分的に供用が開始されています。長谷津水路上流でも貯留池の整備が開始されており、現在も整備が進められています。

水質

戦後、手賀沼の水質は日本一悪いと社会問題になりましたが、その汚濁の約4割が大津川から流入していたと言われています。水質対策として、1976年（昭和51年）度以降、浚渫や大津川浄化施設整備などの対策が進められました。

1989年（平成元年）度から1994年（平成6年）度にかけては、河口付近に礫間接触酸化施設が整備されました。これらの取り組みによって一時的に改善傾向が見られましたが、その後再び悪化したため、1996年（平成8年）度に「手賀沼総合浄化計画」が策定されました。

その中では、大津川浄化施設の改修のほか、大津川左岸第6号雨水幹線に逆井河川浄化施設が設置され、2001年（平成13年）4月から稼働を開始しました。この施設は、雨水幹線の全量を取水し、高い除去率で放流しています。鎌ケ谷市内では、都市化に比べて上下水道の整備が遅れていたため、雑排水対策として下水道整備済地域の処理施設を活用した汚染負荷軽減が進められています。

また、市民の要望を受けて、大津川遊歩道が整備されました。これらの取り組みの結果、大津川上流部のBOD値は大幅に改善しました。現在では、鎌ケ谷市緑の基本計画に基づき、支流の長谷津水路沿いの樹林地周辺を緑地公園とし、流域の自然環境保全が進められています。

支流

上流から掲載

柳沢水路（小池橋水路）
長谷津水路
南木戸水路
上大津川
大津川左岸第6号雨水幹線
大津川左岸第5号雨水幹線
大津川左岸第4号雨水幹線（増尾排水路）
大津川左岸第3号雨水幹線（名戸ヶ谷排水路）
大津川左岸第2号雨水幹線

橋梁

上流から掲載

母路橋（ぼろばし）
白幡橋
山王橋
大津川15号橋
かにうち橋
大津川14号橋
高柳橋 - 千葉県道8号船橋我孫子線
大津川13号橋
関根橋
大津川12号橋
中島橋
大津川11号橋
大津川17号橋
芦川橋
宮下橋
下橋
権現橋
宮根橋
中の橋 - 千葉県道282号柏印西線
上沼橋 - 国道16号
二子橋
大津川橋
ヒドリ橋 - 千葉県道407号我孫子流山自転車道線

脚注

参考資料

鎌ケ谷の河川（鎌ケ谷市）
総合流域防災事業・大津川（千葉県）
鎌ケ谷市議会会議録　平成5年9月定例会第3回（9月7日・03号）
鎌ケ谷市議会会議録　平成6年12月定例会第4回（12月5日・02号）
* 鎌ケ谷市議会会議録　平成9年12月定例会第4回（12月1日・02号）

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