大然閣ホテル火災事故

大然閣ホテル大火災事故

1971年12月25日に韓国ソウル市の高層ホテルで発生し、多数の犠牲者を出した大規模火災。

事故概要

1971年12月25日午前9時50分頃、大韓民国ソウル特別市中区忠武路にあった「大然閣（テヨンガク）ホテル」で発生した、記録的な大火災です。当時、地上22階・地下2階建ての高層ビルであったこのホテルは、出火後わずか1時間足らずで炎上。これにより163人が死亡、63人が負傷するという極めて甚大な人的被害をもたらしました。物的損害も当時の推定で約8億3820万ウォンに上り、韓国の建築物火災史上、特に多くの犠牲者を出した悲劇として記憶されています。

大然閣ホテルの歴史

火災現場となった大然閣ホテルは、ソウル市の中心部、明洞と南大門市場の中間に位置する忠武路に建てられていました。この場所は、かつて日本の統治時代に京城（現ソウル）五大百貨店の一つとされた平田百貨店の跡地です。ホテルは1967年に着工、1969年に竣工。地上22階、地下2階、高さ82.2メートルの当時としては高層かつ豪華な建築物でした。施工は極東建設で、同社会長が代表取締役を務めました。

火災の発生と急速な拡大

事故は、クリスマスの朝、多くの宿泊客が滞在する中で発生しました。午前9時50分頃、1階コーヒーショップでのLPガス爆発が火元とされています。火は瞬時に周辺に燃え移り、可燃性の高い内壁材を伝って驚異的な速さで上層階へ拡大。出火からわずか1時間ほどで、22階建ての建物全体が炎と濃煙に包まれ、逃げ遅れる人々が相次ぎました。

困難を極めた避難と救助

高層階からの避難は絶望的でした。煙が階段やエレベーターシャフトを塞ぎ、脱出路を断ったためです。一部の人々は、隣接する低いビルへの飛び降りを試みたり、シーツなどで作った即席ロープで降りようとしました。しかし、多くの人が落下したり、ロープが切れたりして命を落としました。8階からシーツで飛び降りて奇跡的に助かった女性の例はありましたが、それは稀なケースです。当時の消防体制が高層火災に対応できるほど十分でなかったことも、被害を拡大させる要因となりました。

事故後の変遷

壊滅的な被害を受けた大然閣ホテルは、改修を経て1973年に「ビクトリアホテル」として再開しましたが、翌年には大然閣観光に買収され、ホテルとしての歴史を終えました。その後、「高麗大然閣タワー」と改称され、オフィスビルに転換されています。所有者は大然閣観光から高麗通商（旧大然閣観光）へと変わりましたが、IMF経済危機後のグループ解体を経ても、高麗通商はビルの所有を継続しています。

なお、2010年2月27日には、同じビルで屋上冷却塔からの小規模な火災が発生しましたが、短時間で鎮火されました。

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