大綱銀之助

明治時代の大相撲界において、長年にわたり力士として土俵に上がり、晩年には若者頭として裏方からも角界を支えた大綱 銀之助（おおつな ぎんのすけ）は、嘉永5年（1852年）5月7日、現在の岐阜県大垣市にあたる地域に、沼波 銀之助として生を受けました。

相撲の道を志し、当初は京都相撲で稽古を積みました。その後、東京相撲を主宰する高砂部屋に入門し、1879年5月場所で下位番付である序ノ口に初めて名を連ねました。入門の経緯については、一時期の新聞記事で阿武松和介の門弟であったと報じられたこともありましたが、記録上は一貫して高砂部屋所属として扱われています。

番付を順調に駆け上がり、入門からわずか5年後の1884年5月場所には、関取の壁である十両の下にあたる幕下への昇進を果たしました。しかし、幕下では約10年という長い期間、番付の中位に留まることが多く、上位進出は叶いませんでした。彼の力士人生における最高位は、1891年5月場所で記録した幕下15枚目でした。この幕下中位での停滞期を経て、1896年頃からは番付がさらに下がり始め、三段目が彼の主な活動場所となっていきます。

この三段目に番付が定着した時期とほぼ同じ頃、彼の土俵での振る舞いに特徴が見られるようになりました。場所中の取組すべてに出場せず、特定の数日間のみ土俵に上がり、残りの日を休場するという形です。例えば、1893年頃には、場所の初め3日間だけ出場し、残りの2日間を休場するといった記録が残っています。このような出場形式は、彼が若者頭という、本来は力士を引退した後に就くことが多い裏方の職務を、現役力士と兼務していた可能性を強く示唆しています。特に1905年頃になると、番付は常に三段目の下位に位置するようになりますが、これは若者頭としての業務に多くの時間を割いていたことと関係があると考えられています。実際、同時期に若者頭を務めたり、後に若者頭となった他の力士たちも、番付が三段目の中下位に位置する傾向が見られました。現役晩年の彼の姿は、坊主頭だったと伝えられています。

57歳という当時の力士としては非常に高齢まで現役を続け、1909年6月場所をもって土俵を去りました。

引退後も角界を離れることなく、若者頭として貢献を続けました。1910年1月場所からは、番付に正式に若者頭として彼の名が記載されるようになります。しかし、その若者頭としての記載も1911年6月場所の番付を最後に途絶えます。大綱銀之助は、この場所中あるいは場所を終えた後に、1911年中にその波乱に満ちた、しかし一途な相撲人生の幕を閉じました。享年58歳または59歳（満年齢）。

大綱銀之助の主な土俵歴の歩みは以下の通りです。

1879年5月場所: 序ノ口として番付に登場し、プロの力士となる
1884年5月場所: 幕下へ昇進
1891年5月場所: 自己最高位となる幕下15枚目に昇る
1909年6月場所: 57歳で現役生活に終止符を打つ
1910年1月場所: 番付に若者頭として記載が始まる
1911年6月場所限り: 若者頭として番付から名前が消え、同年中に死去

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