大道寺小三郎

大道寺小三郎：青森経済界にその名を刻んだ銀行家

大道寺小三郎（1925-2005）は、みちのく銀行を率いた伝説的な銀行家にして実業家である。北海道生まれ、医者の家に育ち、旧制函館中学、弘前高校を経て東北大学法学部を卒業した。司法試験に挑むも及ばず、32歳で弘前相互銀行に入行する。不良債権処理や新商品開発に携わり、青和銀行との合併では大蔵省や政治家との交渉にも尽力した。

みちのく銀行における革新的な経営

1986年、みちのく銀行頭取に就任。大道寺は、従来の銀行経営に囚われない大胆な戦略で銀行を改革した。その中心は、個人顧客への積極的なアプローチであった。「家庭の銀行」をスローガンに掲げ、個人預金と住宅ローンの集中的な獲得を目指した。この戦略は見事に成功し、1990年から2004年までの預金残高は1.5倍に増加、個人預金の割合も55.9％から76.4％へと大幅に伸びた。青森銀行をしのぐ成長ぶりは、地元経済界にも大きな衝撃を与えた。青森銀行関係者は、みちのく銀行の急成長を「瞬間風速では負けていたはずだ」と評したという。これは、県内有力企業の大半がすでに青森銀行と取引していた状況下での、リテール戦略の成功を物語っている。

カリスマとワンマン

手腕は高く評価され、大道寺は「カリスマバンカー」と呼ばれた。しかし、その経営は時にワンマン経営と評されることもあった。「俺は9年間で50億円もうけた」という発言や、青森アジア冬季大会の寄付問題での県への苦言など、歯に衣着せぬ物言いは有名である。また、後継者候補を公言する一方、気に入らない役員は躊躇なく降格させる人事を行ったため、社内には常に緊張感が漂っていた。2004年には体調を崩し、表舞台から姿を消す。同年、赤字決算を受け、原田頭取が辞意を表明。後任探しは難航し、役員会は紛糾。大道寺が現役だった頃とは異なり、役員たちの意見が衝突したことで、後継者選出はさらに困難なものとなった。

地域貢献への情熱

一方、大道寺は地域社会への貢献にも熱心に取り組んだ。青森県民駅伝競走大会や日本フィルハーモニー交響楽団演奏会への支援、みちのく文化財団の設立など、文化・スポーツ活動の振興に尽力した。同財団傘下には、みちのく北方漁船博物館（現・あおもり北のまほろば歴史館）やみちのく歴史人物資料館（2014年閉館）を開設。個人で収集した船舶資料を博物館に収蔵し、北前船の復元にも着手した。みちのく丸は2005年に完成し、2014年には野辺地町に無償譲渡された。資料館には、青森ゆかりの人物やみちのく銀行関係者の資料も収蔵された。さらに、行員の提案を受けて本店屋上に風力発電装置を設置したり、フォード社のクラシックカーを購入するなど、独自の行動力を見せた。

晩年と死

2005年5月には、慢性骨髄性白血病を患っていた長女が、みちのく銀行を退職。同年7月21日、心不全のため80歳で死去した。8月25日には、約2000人が参列したお別れの会が開催され、その功績を称えた。杉本頭取は、記者会見で大道寺氏の涙もろいエピソードを披露し、人となりも偲ばせた。

まとめ

大道寺小三郎は、みちのく銀行の成長に大きく貢献しただけでなく、青森経済界全体に大きな影響を与えた人物である。その功績は、銀行経営のみに留まらず、地域社会への貢献という面においても高く評価されている。彼の波瀾万丈の人生は、後世に語り継がれるべきものである。

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