大野つや子

大野つや子氏は、日本の政界で活動した女性政治家です。1934年2月27日に生まれ、2021年1月26日に86歳で亡くなりました。生前は自由民主党に所属し、参議院議員として岐阜県選挙区から2期にわたり選出されました。そのキャリアの中で、中央省庁再編後の第2次森改造内閣では、初めて設置された法務大臣政務官のポストに就任するなど、要職を経験しています。また、国会議員として活躍した政治家一族の一員としても知られています。夫である大野明氏は、運輸大臣や労働大臣などを歴任した衆議院議員でした。明氏の父は、自由民主党副総裁や衆議院議長を務めた大物政治家、大野伴睦氏であり、つや子氏は伴睦氏の義娘にあたります。さらに、二人の次男である大野泰正氏も現在、参議院議員として活動しており、つや子氏は泰正氏の母でもあります。

東京都で生まれたつや子氏は、国府台女子学院高等学校で学び、1952年に卒業しました。その後、1956年11月に大野伴睦氏の四男にあたる明氏と結婚し、政治家の妻としての道を歩むことになります。

つや子氏が自ら政界入りする契機となったのは、夫・明氏の死去でした。1996年3月、明氏が亡くなったことに伴い、参議院岐阜県選挙区で補欠選挙が実施されることになりました。この選挙に、当時の第1次橋本内閣を構成していた自由民主党、社会民主党、新党さきがけの連立与党各党の推薦を受け、無所属の候補者として立候補しました。選挙戦を制し、この補欠選挙で初当選を果たします。そして、同年10月には推薦を受けていた自由民主党へ正式に入党しました。

参議院議員として活動する中で、2001年1月には、省庁の再編が行われた後の第2次森改造内閣において、新設された法務大臣政務官に就任します。これは、大臣を補佐する役割を担う政務三役の一つであり、その初代を務めることとなりました。同年7月に行われた参議院選挙では、岐阜県選挙区で再び当選を果たし、2期目の任期を務めることになりました。

つや子氏の政治姿勢が注目された出来事の一つに、郵政民営化法案への対応があります。2005年8月8日、いわゆる「郵政国会」において、小泉純一郎内閣が進める郵政民営化関連法案が参議院本会議で採決にかけられました。この時、つや子氏は法案に反対する票を投じます。しかし、この法案が参議院で否決されたことを受け、小泉首相は衆議院を解散し、同年9月に第44回衆議院議員総選挙を実施しました。この選挙で自由民主党が圧勝した結果、郵政民営化は国民からの支持を得た形となり、法案は改めて国会に提出されることになります。これを受けて、つや子氏は他の反対派参議院議員たちと同様に、再上程された郵政民営化法案に対しては賛成票を投じ、自由民主党に籍を残す選択をしました。

党内では、2006年10月に自由民主党の人事局長に就任するなど、党務においても重要な役割を担いました。

政界からの引退は、2007年の参議院通常選挙を巡る状況が背景にありました。この選挙の岐阜県選挙区（定数2）では、かつて郵政民営化に反対し衆議院選挙で落選していた藤井孝男氏が無所属での立候補を表明していました。当時改選を迎える議員であったつや子氏に対し、自由民主党岐阜県連はつや子氏を公認候補とし、藤井氏を推薦候補とする方向で調整を図ろうとしました。しかし、これにより自民党系の候補者間で票が分散し、「共倒れ」となる可能性が懸念されたため、つや子氏は県連の方針に難色を示しました。結果として、自民党系候補間の競合を避けるための調整が進められ、2007年2月、つや子氏は参議院選挙への立候補を見送り、政界から身を引く意向を表明しました。これにより、岐阜県選挙区における与党系候補は藤井氏に一本化され、藤井氏は選挙で当選を果たし、後に自民党に復党しています。つや子氏は政界引退と同じ2007年に、これまでの功績が認められ、旭日中綬章を受章しました。

政界引退後は、東京都内で過ごしていたとみられます。2021年1月26日、都内の病院でその生涯を閉じました。86歳でした。長年の政治活動や社会貢献に対し、死去したその日付をもって、従四位の位階が贈られました。

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