大阪市交通局1651形電車

大阪市交通局1651形電車

大阪市交通局1651形電車は、大阪市交通局が運用していた路面電車車両で、1940年に改造され、この年に初めて登場しました。もともと遊休していた5両のボギー散水車を改造したもので、登場当初は1581形と呼ばれていました。この形式が1651形に改番されてからの情報は、1651形に焦点を当てて記述します。

製造経緯

1937年に始まった日中戦争が原因で、日本国内では戦争への対応として経済の統制が強化されました。大阪市でもこの影響を受け、民営の大阪乗合バス（青バス）事業を買収して市営の公共交通機関としての基盤を強化しました。しかし、戦争の影響で燃料供給が厳しくなり、バス事業の維持が困難になる状況が続きました。そのため、利用者が路面電車に集中し、特に市電の輸送能力の増強が大きな問題となりました。

1940年2月からは、利用者の少ない停留所をスキップする急行運転が開始され、さらに新型車両の投入が計画されました。しかし物資が不足する中で新造車両の制作は困難となり、遊休となっていたボギー散水車を活用して、大型ボギー車の1581形が登場しました。

車両の概要

1651形の製造は木南車輌が手掛け、1940年には5両が製造されました。全長は13.7メートルで、側面窓は大きな2段窓が設置されました。客用扉は大阪市電の大型車両として初めて2枚折戸が採用され、前面も流線型から変更されて3枚窓の形状にされました。台車には、先代のボギー散水車のものが流用されたほか、主電動機としては芝浦製作所か川崎重工業製のものが搭載されました。

新しいデザインの1581形は、大阪市電のスタイルを形成する基礎ともなり、その後の車両のデザインにも影響を与えました。特有の「木南スタイル」は、他の都市の電車にも波及し、多くの路線において採用されました。また、同じく木南車輌で製造された名古屋市電2600形や横浜市電2600形とも関連性が見られます。

戦時下における運用

1581形は全車が鶴町車庫に配属され、多くの軍需工場への通勤輸送の役割を果たしました。この時期、鶴町車庫には701形をはじめとする単車も多く、混雑する輸送力の強化が求められました。戦争が進む中、1581形は多くの通勤者を運ぶ重要な車両となり、その存在が際立つようになりました。

しかし、太平洋戦争の大阪大空襲では、1582号と1585号の2両が被災し、復旧が行われたものの戦災の影響を受けることとなりました。1949年には、戦災による欠番があるため改番が行われ、1581形は1651形として生まれ変わりました。

戦後の運行と譲渡

1651形は改番後に都島車庫に異動し、主に繁華な街を走る路線で利用されるようになりました。1956年には完全2人乗務化が進み、側面窓の配置が変更されるなどの改修が行われました。その後、1965年に全車両が広島電鉄に譲渡され、広電の750形として新たな道を歩むことになりました。

このように、大阪市交通局1651形電車は、戦時中の重要な交通手段として市民の移動を支えた歴史的な存在です。

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