大阪市立電気
科学館は、1937年に開館した日本初の
科学館です。通称「電館」として親しまれ、
大阪市民に科学技術の面白さを伝える重要な役割を担いました。
開館の背景
大阪市電気局の創立10周年記念事業として、当初は電気製品のショールームを兼ねた複合施設として計画されました。しかし、後に
科学館としての建設に方針が転換され、電気に関する展示を中心に、幅広い科学分野を学ぶことができる施設として開館しました。
特徴的な施設
電気
科学館の最大の特徴は、日本で初めて導入された
プラネタリウムでした。
ドイツ製の
カール・ツァイスII型投影機が使用され、当時の人々にとって、星空を身近に感じられる貴重な体験を提供しました。また、館内にはテーマ別に「原理館」「動力館」「照明館」「通信館」などの展示室があり、電気の原理や応用について、分かりやすく学ぶことができるよう工夫されていました。全館冷房や電光サインなど、当時としては最新の設備を備えた近代的な建物であり、地域のランドマークとしても親しまれました。
戦後の変遷と閉館
戦災を乗り越え、50年以上にわたり営業を続けましたが、老朽化のため1974年には建て替え計画が持ち上がりました。しかし、この計画は実現せず、
関西電力からの
科学館寄付の申し出を受け、代替施設として
大阪市立
科学館が建設されることになりました。
1989年5月、電気
科学館は閉館し、その役割を終えました。
閉館後の活用
閉館後、電気
科学館の建物は一時的に
大阪市立中央図書館の仮館として利用されました。その後、取り壊され、跡地には複合ビル「ホワイトドームプラザ」が建設されました。このビルの外観は、かつての電気
科学館のデザインを模しており、その歴史を今に伝えています。
プラネタリウム機器は
大阪市立
科学館に移設され、2000年に
大阪市指定文化財に指定されました。
著名人との関わり
漫画家の
手塚治虫は、少年時代に電気
科学館に頻繁に通い、その経験が後の作品に影響を与えたと語っています。また、小説家の
織田作之助も電気
科学館のファンであり、小説『星の劇場』などに電気
科学館の
プラネタリウムが登場します。
- - 1937年3月13日:開館
- - 1945年5月:戦争激化のため休館
- - 1946年2月21日:プラネタリウム営業再開
- - 1948年10月:展示場営業再開
- - 1989年5月31日:閉館
各階の展示内容
昭和13年頃
- - 1階:市電の店(電気製品販売店)
- - 2階:弱電・無電館
- - 3階:電力・電熱館
- - 4階:照明館
- - 5階:原理館
- - 6階:天像館入口(プラネタリウム)
- - 7階:休憩室
- - 8階:事務室
1950年代後期
- - 1階:切符売場、団体受付
- - 2階:家庭電気館
- - 3階:生産電力館
- - 4階:電波通信館
- - 5階:原子力館
- - 6階:プラネタリウム
- - 7階:無料休憩所
- - 8階:天文展示室
- - 9階:屋上遊歩道
1970年代後期
- - 1階:観覧券発売所・ロビー
- - 2階:日常生活のための電気知識
- - 3階:エネルギー源としての電気
- - 4階:情報を伝達・処理する電気
- - 5階:電気で楽しもう(実験機器中心)
- - 6階:天象館(プラネタリウム)
- - 7階:売店・休憩所
- - 8階:倉庫
まとめ
大阪市立電気
科学館は、科学技術への関心を高め、市民に学びの場を提供した貴重な施設でした。その歴史は、日本の
科学館の発展を語る上で欠かせないものです。閉館後も、その遺産は
大阪市立
科学館や、跡地に建設された建物に受け継がれています。