天使の分け前 (映画)

概要

『天使の分け前』（原題：The Angels' Share）は、2012年に製作されたイギリス、フランス、ベルギー、イタリア合作のコメディ・ドラマ映画です。社会派作品で知られる巨匠ケン・ローチが監督を務め、厳しい現実を生きる若者たちがウイスキーとの出会いを通じて希望を見出す姿を描いています。第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、審査員賞を受賞するなど国際的な評価を獲得しました。

あらすじ

物語の中心となるのは、問題を抱え、貧困から抜け出せない悪循環の中にいる青年ロビーです。幾度かの過ちを犯した結果、彼は裁判所から長時間の社会奉仕活動を命じられます。この活動に参加する中で、ロビーは他の受刑者たちと共に、引率者であるハリーと出会います。ウイスキーに深い愛情と知識を持つハリーは、社会奉仕活動の合間にウイスキーの世界について彼らに語り聞かせます。当初、ウイスキーに全く興味がなかったロビーですが、ハリーの影響や、ひょんなことからテイスティングの機会を得たことをきっかけに、その奥深さに魅了されていきます。そして、驚くべきことに、ロビーにはウイスキーの香りと味を正確に識別する、並外れたテイスティングの才能が備わっていることに気づきます。この偶然の発見は、閉塞した彼の人生に一筋の光を差し込み、新たな可能性を切り開くきっかけとなるのです。

主要キャスト

本作に出演する主な俳優は以下の通りです。

ロビー：ポール・ブラニンガン
ハリー：ジョン・ヘンショウ
アルバート：ガリー・メイトランド
モー：ジャスミン・リギンズ
ライノ：ウィリアム・ルアン
タデウス：ロジャー・アラム

主人公ロビーを演じるポール・ブラニンガンをはじめ、主要な若者たちの多くは、ケン・ローチ作品でしばしば行われる手法として、演技経験の少ないキャストが起用されています。

製作

本作は国際的な共同製作体制で製作されました。主要な製作会社として、イギリスのシックスティーン・フィルムズ、フランスのホワイ・ノット・プロダクションズ、同じくフランスのワイルド・バンチが名を連ねています。また、経済的な支援は、イギリス映画協会（BFI）や、ベルギーのLes Films du Fleuve、イタリアのウラニア、フランスのフランス2シネマといった各国の機関や放送局が行っています。撮影は2011年4月25日に開始され、スコットランドのグラスゴーとエディンバラを中心にロケーション撮影が行われました。

公開と評価

映画『天使の分け前』は、2012年の第65回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映されました。監督のケン・ローチは、この作品で審査員賞を受賞し、その健在ぶりを示しました。日本では、2013年4月13日に一般公開されました。特に、同年5月に閉館することが決まっていた東京都中央区の映画館、銀座テアトルシネマのクロージング作品の一つとして選ばれたことも注目されました。

関連項目

映画のタイトルである「天使の分け前」（The Angels' Share）とは、ウイスキーなどの蒸留酒を樽で熟成させる際に、年間約2%程度が蒸発して失われる現象を指す業界用語です。この失われた分が「天使が持っていった」と考えられたことから名付けられました。劇中では、主人公がウイスキーに関わる物語であるため、この言葉が重要な意味合いを持って使われています。

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