天使の玉ちゃん

『天使の玉ちゃん』について

『天使の玉ちゃん』は、1946年に手塚治虫がデビューした頃、富山県で偶然にも漫画の魅力に目覚めた2人の少年が生み出した作品です。後に漫画界に名を残す藤本弘（藤子・F・不二雄）と安孫子素雄（藤子不二雄A）のコンビが初めてタッグを組んだこの作品は、彼らのプロデビュー作でもあると同時に、初めての打ち切りを経験した漫画でもあります。

作品の背景

1951年3月、藤本と安孫子は、川端を散歩中にマヌケな天使の物語を描くことを決め、『天使の玉ちゃん』の構想がスタートしました。彼らはそれぞれ6枚のキャラクター見本を描き、憧れであった『毎日小学生新聞』に投稿することにしました。その内容は、手塚治虫の影響を受けた熱心なファンとして、自分たちの作品を連載して欲しいというものでした。

連載の始まり

1951年12月16日、『天使の玉ちゃん』が連載され、二人はついにプロの漫画家としての一歩を踏み出しました。しかし、初めての連載にあたり、事前に連絡や通知はなかったため、発表された時の驚きと興奮はひとしおであったでしょう。連載第7回が掲載された時、彼らはようやくその事実を知り、賞金が届いた瞬間には信じられない気持ちで新聞を求めて駆け込んだといいます。

あらすじ

物語の主人公である玉ちゃんは、天使長から念願のハネを授かりますが、その後、太陽の熱でハネが溶けてしまい地上に落ちてしまいます。ハネがないと天界に帰れない玉ちゃんは、地上で出会った人々と共に帰る方法を探し続けます。一方、天上にいる天使長もまた、玉ちゃんを助けるためのアイデアを考案し、友達の天使を「天使の輪」に変身させて地上に送り出すことになります。

登場人物

• - 玉ちゃん: 雪だるまのような姿を持つ主人公の天使。
• - 天使長: 長いひげをたくわえた天使。
• - お友達の天使（目が大きいほう）: 玉ちゃんを守るために送られたボディガード。
• - お友達の天使（目が小さいほう）: 目が大きいほうと共に、雲の上で遊びつつ、地上の玉ちゃんを気にかける。
• - 少年: 玉ちゃんによって助けられる少年。
• - タコ: 玉ちゃんから天使の輪を受け取るキャラクター。
• - 金太: 村を襲うクマと戦う少年。

作品の結末

連載は1952年4月4日で終了しますが、その理由や経緯については謎のままとなりました。この作品の物語や制作背景のエピソードは、安孫子が自身の代表作『まんが道』でも詳述しています。永らく復刻がされていなかったこの作品ですが、2023年には藤子・F・不二雄大全集『UTOPIA / 天使の玉ちゃん』が刊行され、手軽に読むことが可能となりました。

あたりの影響

この作品は、後の藤子不二雄の創作活動の基盤ともなり、彼らのキャリアのスタートを切る重要な役割を果たしました。特に手塚治虫との関わりや影響が色濃く反映されている点が、後の漫画文化に及ぼした影響も大きいです。

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