天国と地獄 (トムとジェリー)

トムとジェリー：天国と地獄

1949年公開のトムとジェリーの短編アニメーション作品『天国と地獄 (Heavenly Puss)』は、シリーズの中でも異彩を放つ、独特のストーリー展開とブラックユーモアで知られています。

物語の始まり: 暖炉で眠るトムは、ジェリーに起こされ、いつもの追いかけっこが始まります。しかし、今回は事態が急変します。階段のカーペットに釣られたピアノがトムに直撃し、トムは命を落としてしまうのです。

天国への旅路: 死んだトムは、長いエスカレーターに乗って天国へと向かいます。そこは雲の上にある異世界で、多くの猫たちが「天国急行」という列車に乗り込む様子が見られます。トムの悪友であるブッチ、フランキー、アロイシウス、そして子猫のフラフ・マフ・パフも、それぞれのユニークな死因と共に天国を目指しています。

駅長の裁き: 改札では、白猫の駅長が猫たちの死因を審査し、天国行きを許可するかどうかを判断しています。駅長はトムに、ネズミをいじめていた過去を指摘し、天国へ行くには「許しの証明書」が必要だと告げます。その証明書には、ジェリーの署名が必要なのです。

時間との戦い: 駅長はトムに1時間という猶予を与えます。現世に戻ったトムは、ジェリーに署名を求めますが、ジェリーはトムの願いを無視し、いつものようにトムを困らせます。偽造を試みるトムですが、駅長に見抜かれてしまいます。

ジェリーとの攻防: トムはジェリーにチーズを差し出し、署名を取り付けようとしますが、ジェリーはトムの態度に腹を立て、書類を破り捨てます。激昂したトムはジェリーを叩こうとしますが、地獄の番人スパイクが現れ、トムを追い詰めます。

絶望と希望: トムは破れた書類を必死に貼り合わせ、再び署名を求めますが、天国列車の発車時刻が迫ります。最後の瞬間、ジェリーはトムの必死の願いを受け入れ、署名をしてくれます。しかし、トムはエスカレーターが消滅したため、列車に乗り遅れてしまいます。

衝撃の結末: 列車に乗り遅れたトムは、燃え盛る地獄に落とされ、スパイクに串刺しにされるのです。しかし、次の瞬間、トムはいつものリビングで目を覚まします。ピアノから飛び散った燃えカスがトムに当たっただけだったのです。

夢か現実か: 夢か現実か分からぬまま、トムは生き返ったことを喜び、ジェリーと仲良く抱き合います。

個性豊かなキャラクター: この作品には、トムとジェリー以外にも多くのキャラクターが登場します。それぞれの猫は、コミカルながらも、どこか切ない死因を持っており、作品に深みを与えています。

アニメーションの技術: この作品は、独特のアニメーション技術を用いており、特に地獄の描写は、独特の雰囲気を作り出しています。

日本での放映: 日本ではTBS系列などで、1964年から1990年頃まで放送され、多くの人々に愛されてきました。

『天国と地獄』は、トムとジェリーの他の作品とは一線を画す、独特の雰囲気とストーリー展開を持つ傑作です。コミカルな場面と、衝撃的な展開のバランスが絶妙で、観る者の心を掴んで離しません。夢と現実の境界を曖昧にするラストシーンは、観る者に深い余韻を残します。

もう一度検索