天国は、ほんとうにある

『天国は、ほんとうにある』：ベストセラーノンフィクションとその波紋

2010年、トッド・バーポとリン・ヴィンセントによって著された『天国は、ほんとうにある: 天国へ旅して帰ってきた小さな男の子の驚くべき物語』（原題: Heaven is for Real: A Little Boy's Astounding Story of His Trip to Heaven and Back）は、世界的なベストセラーとなりました。本書は、著者の息子であるコルトンが3歳の時に経験した臨死体験を詳細に記録したものです。

コルトンは緊急手術後、生前知り得ない出来事や人物について語り始めました。流産によってこの世に生まれることのなかった姉のこと、30年前に亡くなった祖父の詳細、そして七色の馬に乗るイエスや天使との出会いなど、驚くべき体験の数々が綴られています。彼は、天国で神の御前に跪くマリアとイエスの姿も見たと語っています。

出版と商業的成功

本書は、2010年11月に発売されると、瞬く間にニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにランクインし、その後も数週間にわたりトップ10に留まり続けました。発売から3ヶ月後には20万部を突破、電子書籍を含めた売上は100万部を超え、紙媒体だけでも1億部を超える驚異的な数字を記録しました。この圧倒的な成功は、宗教的な関心だけでなく、臨死体験という普遍的なテーマへの関心の高さを示しています。

2014年には映画化もされ、興行収入1億ドルを記録するなど、商業的にも大きな成功を収めました。しかし、その一方で、本書の内容に対する批判や論争も巻き起こりました。

批判と論争

本書の出版後、いくつかのキリスト教団体や宗教関係者から批判の声が上がりました。聖書に記述されていない内容や、医学的な裏付けのない記述を問題視する声や、臨死体験そのものに対する懐疑的な意見も存在しました。特に、手術中のコルトンの状態について医学的根拠がない点を指摘する意見が多くみられました。

著名な牧師であるジョン・F・マッカーサーJr.なども、本書の内容を「非聖書的」と批判し、天国観についての異論を唱えました。また、他の臨死体験をテーマとした書籍の著者が、自分の体験は虚偽であったと告白したことも、本書の信憑性に疑問を投げかけることになりました。しかし、コルトン自身は、自身の体験の真実性を主張し続けました。

映画化

映画化権を獲得したソニー・ピクチャーズは、2014年に映画『天国は、ほんとうにある』を公開しました。映画は、コルトン役をはじめとするキャスト陣の演技や、臨死体験を描写した演出などが評価され、商業的に大きな成功を収めました。しかし、Rotten Tomatoesでの評価は46％と、批評家の評価は割れました。

まとめ

『天国は、ほんとうにある』は、臨死体験というセンセーショナルなテーマと、宗教的な内容が相まって、世界中で大きな反響と論争を巻き起こした作品です。その商業的成功は、多くの人々が臨死体験や死後の世界に関心を抱いていることを示唆しています。しかし、同時に、臨死体験の信憑性や、宗教的解釈の多様性について、考えるきっかけを与えてくれる作品でもあります。本書は、読者に多くの疑問と考察を投げかけ、多角的な視点からの解釈を促す、挑戦的な一冊と言えます。

もう一度検索