天探女

天探女（アメノサグメ）：神話に潜む謎多き女神

天探女は、『古事記』では天佐具売、『日本書紀』では天探女と表記される女神です。その名は、天稚彦に仕える存在として、また天邪鬼の原像として、日本神話の中に刻まれています。

神話における役割

天探女が登場するのは、葦原中国平定の物語です。天照大御神が天稚彦を派遣しますが、彼は長らく復命しません。そこで、雉の鳴女が遣わされますが、天探女はこれを不吉と告げ、天稚彦に射殺させてしまいます。しかし、その矢は天に届き、高木神によって天稚彦に投げ返され、命を奪うことになります。

この物語において、天探女は不吉な役割を演じています。しかし、元来は神託を受け、吉凶を判断する巫女を神格化した存在と考えられています。政治と祭祀が一体であった時代、神託を捻じ曲げる巫女の存在は、神への反逆と見なされ、災いをもたらすと恐れられました。天探女の姿は、そうした背景を反映しているのかもしれません。

また、天探女は他の神々と異なり、「命」や「神」といった尊称が付けられていません。これは、彼女が特異な位置づけにあることを示唆していると考えられています。天津神であるか国津神であるかも定かではありません。

天邪鬼の原像

天探女は、民話に登場する天邪鬼の原像であるとも言われています。人の心を読み、逆らう存在として、天邪鬼は恐れられる一方で、どこか憎めない存在でもあります。天探女もまた、神話の中で不吉な役割を演じながらも、人々に記憶される存在であり続けています。

古典において、天探女が天磐船に乗って停泊した場所は高津であるとされています。

天探女を祀る神社

天邪鬼の原型とされる天佐具売を祀る神社は少ないですが、照天神社では縁を探す女神として信仰されています。

平間神社（和歌山県西牟婁郡白浜町）
照天神社（神奈川県相模原市緑区）

天探女は、神話の中で特異な役割を担い、天邪鬼の原像とも言われる謎多き女神です。その存在は、古代の人々の神への畏れや、災いに対する恐れを反映しているのかもしれません。しかし、一方で、縁結びの神として信仰される側面も持ち合わせており、多様な解釈を許容する、魅力的な存在と言えるでしょう。

もう一度検索