天満神社 (稲美町)

天満神社（稲美町）

天満神社は、兵庫県加古郡稲美町国安に鎮座する天満宮です。学問の神として広く崇敬される菅原道真公を主祭神として祀っています。

由緒と祭神

神社の社伝によれば、その起源は隣接する天満大池の守護神として、池を神格化した池大明神（大年大神）や王子権現をお祀りしていたことに始まります。時代は下り、平安時代に菅原道真公が藤原時平の讒言によって大宰府へ左遷される途中、この地に立ち寄って休息をとったという伝承が生まれました。この故事にちなみ、道真公の御霊をお迎えして主祭神とし、以来「天満宮」として崇敬されるようになったと伝えられています。現在も、主祭神である天満天神（菅原道真公）の御神霊とともに、かつてこの地で篤く信仰された大年大神（池大明神）や市杵島姫命（弁財天）といった神々が合祀されています。

年間祭事

天満神社では、年間を通じて様々な祭事が厳かに執り行われています。

春祭（祈年祭）: 毎年3月下旬に斎行され、その年の豊かな実りを神に祈願する祭事です。
夏祭: 毎年7月の第4日曜日に催される祭りで、夏越しの祓いの意味合いも持ちます。
みたま祭: 毎年8月15日に執り行われ、祖先や戦没者などの御霊を慰め、平和を祈る祭事です。
秋祭（例祭）: 神社の年間祭事の中で最も重要なもので、地域の最大の祭りです。毎年10月、国民の祝日である「スポーツの日」の前々日にあたる土曜日を宵宮、前日の日曜日を本宮として盛大に行われます。

秋季例大祭と特殊神事

秋季例大祭は、天満神社の祭事の中でも最も賑わいを見せる祭りです。例祭期間中は、地域の氏子たちが一体となって祭りを盛り上げます。

宵宮には、地域ごとに特色のある屋台（太鼓台）が繰り出され、勇壮な練り回しが行われます。本宮では、これに加えて各地域に伝わる伝統的な獅子舞が奉納され、祭りの雰囲気を一層華やかなものにします。

この秋季例大祭における最大の特徴であり、全国的にも類を見ない特殊な神事として知られているのが、神輿渡御の際に執り行われる「神輿投げ込み」です。神輿が境内を出発し、氏子地域を巡幸した後、神社に隣接する広大な天満大池へと進みます。そして、担ぎ手によって神輿が池の中へと投げ込まれるのです。この神事は、御神体を水によって清める「みそぎ」としての意味に加え、稲作に必要な農業用水を供給する天満大池が常に豊かな水を湛え、それによって五穀豊穣がもたらされることへの感謝と、来る年の豊作を祈願する古来より受け継がれてきた信仰の形です。水しぶきを上げて池に投げ込まれる神輿の姿は非常にダイナミックで、多くの参拝者や見物客を惹きつける祭りのハイライトとなっています。

地域社会との結びつき

天満神社は、古くから地域の信仰の中心であり、祭事を通じて地域住民の結びつきを強めています。特に秋季例大祭は、地域の各集落が屋台や獅子舞を奉納することで参加し、共同体としての意識を高める重要な機会となっています。神社の運営や祭りの準備には、「十六人方当番」と呼ばれる地域独自の組織が深く関わるなど、神社と地域社会が一体となった活動が行われています。

所在地と周辺情報

天満神社は、兵庫県加古郡稲美町国安字宮山に位置しています。神社のすぐ西側には、祭事とも深く関わる天満大池が広がっています。また、近隣には円光寺などの寺社もあり、この地域の歴史や文化に触れることができます。神社の正式名称は、公式サイトなどでは「国安天満神社」と表記されることもあります。

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