天狗沢瓦窯跡

天狗沢瓦窯跡の概要

天狗沢瓦窯跡（てんぐさわがようせき）は、山梨県甲斐市に位置する貴重な考古遺跡です。この跡地は7世紀の白鳳期にあたるもので、山梨県に指定された重要な史跡とされています。出土品の中には61点以上の貴重な考古資料が含まれており、これらは県の指定文化財として保護されています。

立地と歴史的意義

甲斐市天狗沢は、甲府盆地の北西端に位置し、茅ヶ岳の南麓に広がる地域です。標高は約340メートルで、貢川と荒川が形成した舌状台地の上に位置しています。この地域は、古くから農耕と定住が営まれてきた場所であり、弥生時代や奈良・平安時代の集落遺跡も存在します。特に、大下条には金の尾遺跡や松ノ尾遺跡といった重要な遺跡が点在し、古代から中世にかけて人々が暮らしてきた証拠が残されています。

天狗沢の瓦窯跡は、古代甲斐国における瓦生産の中心地としても注目されており、周辺には古代寺院に瓦を供給していたとされる他の窯跡も見つかっています。天狗沢は、各時代における人々の生活や文化の変遷を知る上で重要な場所です。

発掘調査と出土遺構

この瓦窯跡の発掘調査は1986年から行われました。特に昭和61年には、桑畑を改植中に多量の古代瓦が発見され、続いて1987年からは甲斐市教育委員会によって詳細な調査が始まりました。調査の結果、3基の瓦窯と複数の遺物が発見され、各窯の年代や形態の違いが明らかにされました。

1号窯は、全長9メートル、幅80～90センチメートルの地下式の窯で、周囲には瓦や須恵器の遺物が出土しています。この窯は、井戸のように深く掘られた形状をしており、良好な状態で残っています。2号窯、3号窯とも異なる特徴を持ち、それぞれの瓦の種類や製作技術が検討されています。特に、1号窯から出土した瓦には、古代の文化や技術が色濃く反映されています。

出土品の特徴

出土した瓦の中には、軒丸瓦があり、周縁部に特徴的な文様の異なる二種類が確認されました。これにより、瓦の製作技術に関する変遷や、製作地の広がりも考察されています。瓦の文様や製作技法が他の地域の出土品と共通していることから、天狗沢瓦窯は広域的な文化的交流の一環として位置づけられています。

まとめ

天狗沢瓦窯跡は、古代の瓦生産技術やその歴史を調査するうえで非常に重要な遺跡です。出土した瓦や遺構は、当時の人々の生活様式や文化を知る貴重な手がかりを提供しています。そのため、今後もさらなる研究と保護が望まれています。この瓦窯跡は、山梨県における文化財としての価値が高く、後世に受け継がれるべき重要な資産であると言えるでしょう。

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