太田朝敷

太田朝敷（おおた ちょうふ）

太田朝敷は、1865年5月2日に首里で生まれ、1938年11月25日に亡くなった沖縄の新聞人、政治家です。彼は、慶應義塾で福沢諭吉の教えを受け、琉球新報の設立に深く関わり、後に社長を務めました。また、言論人として沖縄の日本本土への同化を強く訴えたことでも知られています。

来歴

1865年、首里に生まれた太田朝敷は、1882年に第一回県費留学生として高嶺朝教、謝花昇らと共に上京し、学習院を経て慶應義塾で学びました。1893年には琉球新報（旧）の設立に参画し、1929年には同社の社長に就任。同年には首里市長にも選出されています。

同化主義的言論

太田朝敷は、日清戦争において親中派の頑固党に対し、親日的開化党の立場から論陣を張り、その後も一貫して沖縄の日本本土への同化を強く主張しました。1900年の講演では、「沖縄の今日の急務は、全てを他府県に似せることである。極端に言えば、くしゃみをすることまで他府県の通りにすることだ」と、過激な同化主義を唱えました。

人類館事件への対応

1903年、大阪で開催された第五回内国勧業博覧会で、学術人類館という見世物小屋が建設され、琉球女性がアイヌ、台湾人、朝鮮人、中国人、インド人、ハワイ人らと共に「陳列」されるという事件が発生しました。この事件に対し、朝鮮や中国の留学生が抗議の声を上げる中、太田朝敷も琉球新報紙上で「隣国の対面を辱めるものである」と批判しました。しかしその一方で、「琉球民族が生蕃（台湾高山族）やアイヌと同一視されるのはこれ以上の侮辱はない」と、露骨な差別意識を示す論評も行いました。

記念切手のモデル

太田朝敷の肖像は、1953年10月1日に琉球郵便が発行した新聞週間記念切手のデザインに採用されています。この切手のデザインは、洋画家の大城皓也が手がけました。

参考文献

石田正治「大田朝敷における愛郷主義とナショナリズム（一）」『法政研究』第66巻第3号、九州大学法政学会、1999年12月、41-88頁
石田正治「大田朝敷における愛郷主義とナショナリズム（二）」『法政研究』第66巻第4号、九州大学法政学会、2000年3月、69-124頁
石田正治「大田朝敷における愛郷主義とナショナリズム（三・完）」『法政研究』第67巻第1号、九州大学法政学会、2000年8月、93-143頁
石田正治「沖縄における近代化の希求 : 太田朝敷の論説を中心として」『法政研究』第64巻第1号、九州大学法政学会、1997年7月、21-100頁
石田正治「沖縄ジャーナリズムの源流・太田朝敷を語る」 (PDF) 『月刊・琉球フォーラム』第145号、2005年。
比屋根照夫・伊佐眞一編集、琉球新報監修『太田朝敷選集 全3冊』第一書房、1993-1996。
* 石田正治『沖縄の言論人 大田朝敷―その愛郷主義とナショナリズム』彩流社、2001年。



太田朝敷は、沖縄の近代化において重要な役割を果たした人物であり、その思想や行動は、今日の沖縄を考える上で貴重な資料となっています。

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